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ハロウィンつめあわせ

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「……え?」
一瞬、なにを言われたのかわからなかった。
わかってからも、蝮は戸惑い、眉根を寄せて黙ったままでいる。
すると、柔造はふたたび口を開く。
「クリスマス、一緒に過ごさへんか」
その言葉の意味を考える。
そして、蝮はハッと思いつく。
「もしかして、志摩家でクリスマスパーティーをするつもりで、そこに私を……?」
「さすがにウチでもそれはやらへんわ」
柔造はあきれた声で否定する。
「そういうことや、のーて」
少し真面目な顔になって、柔造は続ける。
「ふたりきりで、ってことやねんけど」
クリスマスを一緒に過ごす。
ふたりきりで。
それはどういうことなのか。
「冗談」
「冗談やない、俺は本気や」
柔造は蝮の言葉をさえぎって言った。
「今までそれらしいこと言ったことなかったし、おまえとはよおケンカしてきたから、冗談やって思われても、しゃあないと思う。せやけど、俺はおまえのことをよお見てきたと思うで。よお見てきたうえで、おまえがええと思うから、誘ってる」
幼いころからのつきあいで、京都を離れて正十字学園に通ったのも同じ時期だった。
自分たちはまだ若いが、それでも、それなりに長い時間をともにしてきた。
長いあいだ、相手のことを見てきたのだ、お互い。
「返事は?」
柔造が優しい声で聞いてくる。
蝮の心拍数があがった。
どうしよう。
どうしよう。
どうしたらいい。
迷って、悩んだ挙げ句、蝮は口を開く。
「考えとくから……!」
そう返事すると同時に柔造から眼をそらし、さらに身をひるがえした。
身体がなんだか熱い。顔が赤く染まっている気がする。それを見られたくない。
来た方向へと急ぎ足で進む。
廊下を曲がった。
そして、ふと気づく。
自分の手に、まだ柔造が落とした飴があることに。
いつのまにか、その飴を握りしめて、ここまで来てしまっていた。

手の中で飴が溶けてしまいそうだ。










作品名:ハロウィンつめあわせ 作家名:hujio