二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

Shadow of HERO 7

INDEX|1ページ/2ページ|

次のページ
 


「バニーちゃんおはよ。」
「お、はようございます…」

翌朝、迎えにきたバーナビーと顔を合わせた虎徹の態度は、昨日と何ら変わりないものだった。避けられるかもしくは直球に聞かれるかを覚悟していた身としては、少々困惑してしまう。どう反応したものか迷っているうちに、彼女は「いつも悪いな」と言って車に乗り込んでしまった。

「お前の上司も人使い荒いよな。こういう日ぐらい遅番にしてあげたっていいだろうに。」
「こういう日…とは?」
「深夜に出勤したんだろ、今朝のニュースでやってたぜ。」
「!」

危うくブレーキを踏みかけたが、なんとか堪える。バーナビーの動揺を余所に虎徹、ヒーローTVはいつもチェックしているが昨夜のはもう寝ていたため見られず、悔しい思いをしたことを語った。

「今度からはバニーちゃんに出動の時は電話してもらおうかなー、なんてな。」
(どういうことだ…あれはオバサンじゃない…?)

あれだけ一致していて、そんなことがあり得るのか。

「オバサン、兄妹はいるんですか…?」
「へ?兄貴が一人いるけど…?」

ではあれは虎徹の兄か、それなら動作が似ていてもおかしくはない。一瞬それだと思ったのだが―――すぐにそれを打ち消した。あの時バーナビーは「オバサン」と声を掛け、謎のヒーローはそれに反応した。名前なら兄が反応するのも解るが、あの呼び方では本人以外あり得ない。
となると、やはりあれは虎徹ということになる。それなのに今の話はどういうことだ。

(もしかして…誤魔化そうとしている…?)

バーナビーは決定打を持っていない。このまま虎徹が寝ていたということを主張し続けたら納得せざるを得ない。家にいたという証拠を出せと言ったところで、そんなものある方が稀だろう。
会社に着いて仕事を始め、その可能性は強まった。どこがどう、というわけではないが不自然なのだ。ボロを出さぬよう、きっかけを与えぬよう必死になっている感がある。悲しきかな彼女と四六時中共にいたせいで、それぐらいのことは気付けるようになってしまった。

(このまま追求しても無駄だ。何か決定打を探さないと。)

事務をこなしながら、ひっそりと胸の内で決意した。


Shadow of HERO 7


鏑木・T・虎徹 37歳 既婚(夫は鏑木巴、5年前に死去)
オリエンタルタウン出身。現在は一人娘を実家に預け、ブロンズステージに単身赴任中。ハイスクール卒業後、TOPMAGに就職。数ヶ月目に会社はアポロンメディアに買収されたが実力をかわれて解雇されることはなかった。現在は一般事務として働いている。

だてに20年間記憶の中のマークを頼りに両親の敵を追い掛けていたわけではない。一般人の個人情報なら難なく調べられるぐらいの技能は持っている。しかし簡単に手に入った虎徹のプロフィールはなぜか穴だらけで、バーナビーは眉を寄せた。まず彼女のプロフィールにはどのようにして会社へ入ったのか、という詳細が一切ない。コネと考えようにも身内は社内にいないようだし、第一アポロンメディアは筆記試験が必須だ。そこはバーナビーだって妥協されなかった。しかし虎徹のデータには筆記試験の成績なんて載っていない。それに側で見ていると要領の悪さが目立つし、実力をかわれたというのも嘘臭い。バーナビー達のようにヒーローとして雇われたと考えた方がしっくりくる。
しかしこれだけだと根拠として付きつけるにはまだ弱い、パソコンは苦手だとか適当にあしらわれるのが関の山だ。

「……今日はここまでだな。」

時計は深夜2時を指している。日中は護衛があるため、調べ物は帰ってからでないとできないのが厳しい。正直もう少し詰めたいところだが、今体調を崩して護衛を外されたら本末転倒なのだし、休養はちゃんととらなければ。そこでハタと気付いた。

「あの人がヒーローなら護る必要なんてないじゃないか。」

虎徹を警護することになったのは、犯罪者しか狙わないはずのルナティックが彼女を襲い、謎に包まれていた容姿と名前を晒したためだ。それまでの行動パターンを逸していたから、念のためにとバーナビーが付けられた。だがこうなってくると、その前提は崩れる。虎徹は常に警護しなければならないほど弱くないはずだ。アポロンメディアは雇い主なのだし、十分承知しているだろう。ルナティックが彼女の前に現れたのだって、彼女がヒーローであることと関係している可能性が高い。それだって向こうは推測済みなはず。その上でバーナビーを付ける意図とは一体何なのか。

(ロイズさんに尋ねてみた方がいいかもしれないな…。いや、確か社長命令と言っていたからマーベリックさんの方がいいか?)

ここまで考えると、今己が関わっているのはすごく不自然なことだということが判ってくる。バーナビーは社長命令があったから渋々関わることにしたわけで、つまりこの不自然な状態はマーベリックが作りだしたということだ。だったらイチかバチか、情報収集も手詰まりなのだしぶつかってみるしかない。
吉と出るか凶と出るか、考えながらバーナビーは証明を消した。


作品名:Shadow of HERO 7 作家名:クラウン