最後の願い
紫苑。
私の一番大切で、大好きな人。
そしてどんなに欲しても手に入らなかった唯一のもの。
そう、私はあなたの愛が欲しかった。あなたの愛だけが欲しかった。
そのほかのモノは何もいらない。
優遇された暮らしも、誰よりも恵まれた学習環境も何もかも。
でも駄目だった。
やっぱり私の生きる世界とあなたの生きる世界は違っていたのね。
紫苑。わたしね、少しだけそんな気はしていたの。
あなたはこのNO.6で、他の人とは違う何かをずっと感じていたように見えたから。
その時の私にはそれがなんだったのか、結局わからなかったけれど。
今はどうしてあなたがNO.6じゃ私じゃ駄目だったのかわかる気がする。
ほんの少ししか会うことはできなかったけれどネズミ、彼素敵な人ね。
NO.6の住人にはない「生きる力」を彼からすごく感じた。
きっとネズミだけじゃない。西ブロックの人たちもきっと生きる力に満ち溢れているんでしょ。
もうそろそろいかなくちゃ、風が彼女が呼んでる。
このまま彼女を通して、これからあなたがどう生きていくのか見ていたい。
でも、私はもう存在してはいけないから。
還らなくては。
彼女に、そしてこの自然そのものに。
紫苑、紫苑、紫苑、紫苑。
この世で一番優しい、そして残酷な人の名前を呼ぶ。
この声があなたに届くことはなくても呼び続ける。
あなたは私の不幸を嘆くかもしれない。
私の人生は他の人と比べると、確かに短くてつらいこともたくさんあった。
だけどあなたに出会えたから、わたしは"不幸"ではなかった。
ありがとう、本当にありがとう。
紫苑どうか、わたしの分まで幸せになって。
あるはずだったわたしの未来、そしてこの都市の未来を全てあなたに託していきます。