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【イナズマ】教えて、ダーリン

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「鬼道ーいるかー」

昼休み、教室で半田や鬼道と話してたら、よく知ってる声が聞こえた。
揃って顔を上げて見ると、入り口に立っていたのは予想通りの人物。
だったんだ、けど、

「……どうしたんだ」

鬼道が怪訝そうな顔をしたのも無理ないと思う。
こちらを覗きこむ風丸の、いつもは高く結い上げられている空色の髪は、ぺたっと下ろしてあった。
普段、練習の時にちょっと直したりしてるのは見たことあるけど、
完全に下ろしてるっていうのは珍しい。
っていうか、今日の朝連の時はちゃんとまとめてたはずだけど?

「鬼道、ヘアゴムの予備持ってないか?」
「ヘアゴム?どうだったか……ちょっと待ってろ」
「どうしたの?ゴム」
「さっき体育の時間に切れた」
「ああー……」

もう、うっとおしくてなーと苦笑する風丸につられて苦笑いを返す。
風丸の髪は少し癖のあるストレートで、普段はあまり意識してないけど、改めて見ると凄く長い。
背中の真ん中よりちょっと上くらいの長さだから、セミロング……というよりは、
やっぱりロングヘアって言ったほうがしっくり来る。
全然梳いたりしてないのか、長い髪は量を保ったまま真っ直ぐに落ちて、
ぱつっと切りそろえられていた。
陸上でもサッカーでも、年がら年中日の下で運動してる割には、
全然焼けてもないし、傷みもないように見える。
うーん、女の子が羨ましがりそうな質と長さだなー

「ん?どうした?」
「いやー珍しいなーと思ってさ」
「そうか?」
「いっつも括ってるじゃん」

ちょっと髪型が違うだけなのに、全然知らない奴に見える。
印象って言うのは大事だ。

「でも、わざわざゴム借りにここまで来たのか?」

半田の問いかけに、風丸は小さくため息を零す。
風丸のクラスと半田や鬼道のクラスはそこそこに離れてるから、
半田の疑問も最もだ。
まあ、距離で言うなら俺のクラスのが遠いわけだけどね。
一番端から端まで移動しなきゃなんないし。

「うちのクラスに持ってそうな奴いなかったし、女子に借りるわけにはいかないし……」
「えー言ったら貸してあげたのに」
「松野に借りるにしても結局ここまで来なきゃならないだろ。それに」
「それに?」
「お前のは派手なんだ……」
「えー」

そうかなあ。そんなこともないと思うけど。
そりゃ、ラメ入ってたり蛍光色だったりするけど、
校則で禁止だから派手な飾りがついてるわけじゃないし、
色だけなら風丸の赤いヘアゴムとそんな変わらないと思うけど。
まあ、でもどうせ借りるなら鬼道のほうがいいよね。
俺が風丸だったらそうするし。
まあ、野暮な突っ込みはしないでおこう。

「風丸、これでいいか?」
「ああ、サンキュー。ありがたく借りるよ」

どうやらスペアは見つかったらしい。
差し出された黒いヘアゴムを受け取って、髪をまとめようとした風丸に、
鬼道がひょい、とヘアブラシを差し出した。

「使え」
「すまん」

鏡を見ないで、ブラシを使って髪を整えていく。
俺も長いといえば長いけど、
風丸みたいに高いところでまとめられる長さじゃないので、
ポニーテールを結ぶっていう動作はちょっと物珍しい。

「器用だなー風丸」
「慣れだ、慣れ。半田も毎日結んでたら出来るようになるぞ」
「結ぶ髪がねーよ」
「ねえ、風丸ってさー昔から髪長いの?」
「ん?ああ、まあ。一回切ったんだけど落ち着かなくてな。結局伸ばし直したんだ」
「へえー……」

よし、と呟いて顔を上げると、そこには俺のよく知ってる風丸が立っていた。
やっぱり、結んでいる方がしっくりくるし、風丸らしいと思う。
髪を下ろしてる風丸って、俺から帽子を取っちゃうみたいなものだと思うんだよね。

「鬼道ありがとう。返すの明日でいいか?」
「いや、どうせ家に余ってるものだから別にかまわん。持っていけ」
「いいのか?」
「ああ」
「ありがとう」

にこりと笑ってブラシを手渡す風丸に、鬼道も小さく微笑む。
言葉数は少ないけど、なんていうか、いい雰囲気だ。
畜生、あてられそうだ……半田も髪が長かったらこういうチャンスもあったかもしれないのになあ。惜しい。
思えば、何気にこの四人の中で髪が短いのって半田だけだ。
ちょっと比率がおかしい気もするけど、だからと言ってショートカットの風丸や鬼道は想像できないしなー
というか、ちょっとそれは面白い景色になりそうだ。誰とは言わないけど。

「何にやにやしてるんだ……松野」
「え?いやそんなことないって。あー……き、鬼道も昔から長いの?」
「まあ、そうだな。大体いつもこれくらいだった」
「へえ……なんか、想像出来るような出来ないような……」
「なんだそれは……」
「いや、小さい鬼道ってなんか想像できなくてさー……風丸はなんとなく想像できるんだけどなー……あれじゃない?女の子に間違えられたクチじゃない?」

俺が話題を逸らすために口にした何気ない一言に、風丸の顔が微妙に引きつった。
否定なり肯定なり、どちらにしろ風丸なら穏やかに流してくれる話題だと踏んだのだけど、あれ、もしかして地雷踏んだ?やっちゃった俺?
風丸はつつつーっと視線を逸らしながら、歯切れの悪い口調で、

「うん、まあ……そんなこともあったような……なかったような……」
「あるよなーそういうこと。俺の兄ちゃんも小さい頃よく間違われてたって言ってた」
「お、俺も俺も!可愛いわねー松野さんのお嬢ちゃんってよく言われたってママンが言ってた!」

半田ナイス、ナイスフォロー。その無邪気さに救われたよ今!
結局そのままチャイムが鳴って、その場はお開きになった。
……風丸のあの反応は気になるけれど、あんまり触れないほうがいい話題っぽい。
何か盛大に嫌な思い出とかあるのかもしれないし……
普段穏やかな人にああいう顔されると、どうしたらいいのか対処に困るってことを知った。
風丸怒らせると恐いし、追及しないようにしよう……


余談。
後日、まったく別の状況で、偶然風丸の反応の意味を知ってしまったんだけど、
まあ、それはまた別のお話ってことで。