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となりのジャック

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 ピンポーンというチャイムの音に、モニターも確認せずドアに向かう。オートロックのチャイムは鳴らなかったので、大方隣人か、もしくはマンションの人間だろうとそう見当を付けたからだ。
 芸能人の別宅があるらしいという噂が流れるだけあって、このマンションのセキュリティは信用して良い。エントランスモニターは24時間監視されているし、鍵は複製の出来ないチップのインプットされた最新式のものだ。まさか強盗でも、たちの悪い勧誘でもあるまい。高を括って玄関までの廊下を急ぐ。
 

 「帝人、まだおきてるか」

 「静雄さんですかー?待って、今開けますからねー」


 案の定ドア越しに聞こえたのはさっきまで一緒に夕食を摂っていた隣人の声で、帝人は気の短い隣人にとりあえず待て、の声をかける。ないと思うが、機嫌が悪かったらドアを蹴り破られかねない。そればっかりは、流石の最新式セキュリティでも解決できない問題なのである。
 がちゃがちゃとせわしない音を立てながら鍵を開けてる間、隣人はうんともすんとも言わなかったので、恐らく機嫌は悪くはない。しかし思い当たる用件もないので、帝人は自分でもそうと意識しないまま怪訝そうな顔つきでドアを開けた、のだが。


 「何か忘れ物ですかー?・・・・・って、」
 

 ドアの向こうから表れたものを見て思わず絶句する。効果音を付けるとしたら、
 ドォォォン!!
 サァ―――・・・
 で、あろうか。


 「ハッピーハロウィン」

 「わぁああああ・・・・・」


 恐らく隣人のものであろう奇妙なかぼちゃの被り物の下からもわかるドヤオーラに気圧されて、元々怪訝そうな顔だった帝人の顔が苦渋の表情に満ちる。あたたたた・・・と額を押さえる動作をすると、隣人は完全なカタカナ英語でトリックオア、トリート?と小首を傾げた。・・・か、可愛くねえええ。てかうぜええええ。


 「ハロウィンだぞ帝人」

 「わかってますけど、それ・・・・」

 それはないわぁ、と思わずかぼちゃをノックする。トントン。硬!わ、これ、本物なんじゃないの?重たくないのかこの人・・・・・・いや、ないか。

 「・・・?かぼちゃ」

 「見りゃわかりますけどぉ!そうじゃなくてぇ!」


 ぶっちゃけ元々あまり言葉の通じる方でもないので(もしかして:頭がよわi)埒が明かない。だけれど玄関先でやりあうわけにもいかないので、とりあえず隣人を家の中にあげようとするのだが、手招く帝人にかぼちゃ頭をふるふると振ったきり、隣人は一歩たりとも動こうとしなかった。・・・なに?なんなの?


 「帝人、トリックオアトリート」

 「・・・それが許されるのは小学生まで」

 「トリックオア、トリート」

 「あなたさっき散々デザート食べたじゃないですか!」

 「トリックオア、トリート。・・・何回も言わせんな」


 「何様!!???」


 仕舞いには腕をつかまれて、シュール以外の何者でもないかぼちゃ頭の男(ドアップ)に菓子を強請られる。なんなんだこれ。どうすればいいんだこれ。思いがけない近距離からの威圧に頭がぐるぐる回る。
 しかし、そうは言われてもこの家の中に菓子などない。デザートはいつも隣人の担当だったし、無理矢理一人暮らしをしている帝人には、元々生活にそう余裕もないのだ。隣人にも散々『自炊するなら二人分作った方が家計が助かる』と伝えてあるのに。何をそう強引なのかわからないまま、帝人は何度もないものはないです、とかぼちゃ頭をつっぱねた。


 「ないなら作ればいいだろ」

 「いやいやいやいやwwwないんだから悪戯してさっさと帰ってくださいよ!暴力以外で!」

 「いたずらぁ?なんで?」

 「なんでって、『お菓子をくれなきゃいたずらするぞ』でしょ、ハロウィンって」



 「・・・・・そうなのか?」

 「え、えー・・・」



 二人の間に奇妙な沈黙が降りる。意味も分からずにトリックオアトリートと連呼していたのだろうか、このかぼちゃ男は。
 しゅぼしゅぼと勢いを失った男を今度こそ家の中に引っ張り上げて、リビングのソファに座らせる。いつもの彼の定位置。頭だけが、まぁ、いつもとちょっと違いますけども。


 「静雄さん、本当に意味知らなかったんですか?」

 「・・・・・・・・」

 「ていうかじゃあ、静雄さんはなんて聞いたんです?」

 「・・・・・・・・てる、って、」

 「んん?なんて?」



 「お菓子をもらえなきゃ、・・・・そいつに嫌われてるって」



 幽あの野郎・・・と、かぼちゃ頭の下からもわかるほど隣人特有の不機嫌オーラが顔を出す。ていうかそれ外さないんですか、とは、怖くて言えなかった(無念!)。



 「つまり、嫌われてる人はお菓子はもらえないってことですか?」

 「・・・・・帰って来たら一発殴る」

 「・・・聞いてないし」



 かぼちゃ頭の下でぐるぐると威嚇にも似た音を出している隣人は、最早自分の世界に入ってしまっている。これは当分駄目だなぁと踏んで帝人はとりあえず冷蔵庫に向かった。こういう時の彼には牛乳に限る。牛乳は裏切らない。いつだって、牛乳と甘いものがあれば、とりあえず彼はご機嫌だった。
 それにしても、である。

 「だからあんなに必死だったんですねぇ・・・」
 
 かぼちゃのせいで顔は見えなかったが、声が、態度が、いつものぼんやりした彼の雰囲気からは想像もできない位、とがっていた。迫られていた時は軽くパニックになっていてわからなかったが、今思うと彼も少し、焦っていたのかもしれない。――――帝人に、嫌われているかもしれないと思って。



 「はい静雄さん、牛乳」

 「・・・・・おう」

 「冷蔵庫に他に、卵と砂糖がありました」

 「・・・・・・?」



 それに気付いて自然とにやつく頬を押さえながら、バニラエッセンスはないですけど、と笑う。でもかぼちゃがありましたから、それを入れたら良いですよね、と続ける内に、燃えるように顔が熱くなった。もしかしなくとも多分これから、僕はとても恥ずかしいことを言う。


 「だから、その、」


 用意しておけと言えば良かったのにそれを言わなかったのは、彼の意地だったのだろうか。それとも僕を、信じていたからだろうか。
 いずれにせよ、だったらこちらも応えなくてはと思う。ハロウィンは元はケルト人の行う収穫祭だったと聞いた。収穫を得たことに、感謝を捧げるお祭り。ならば。


 「プリンでよかったら、その、・・・・作ってあげます」


 意を決して口を開く。顔はもう火を噴くのではというほど熱い。
 反応のない隣人の前でおーい、と手を振っても、かぼちゃ頭のせいで今どんな表情をしてるのか、何を思ってるのか、なにもわからない。けど、わかったこともある。隣人にも、きっと伝わっただろう。
 それから今度は隣人が、意を決したように、ゆっくりと口を開いた。


 「・・・トリックオア、トリート。・・・帝人、」

 「はい、」

作品名:となりのジャック 作家名:キリカ