私が側にいます
ギリシャ共和国で、政府が巨額の財政赤字問題を解消するための大規模な財政緊縮化措置を発表した。
官・民を問わず多くの労働組合がこれに反対する大規模なデモやストライキが頻発しており、国内は混乱して麻痺状態へと陥った。
ギリシャが加盟しているEUもギリシャへの経済対策に頭を悩ませていた。
一方、国の具現たるギリシャ(人名:ヘラクレス・カルプシ)も、例年2〜3月は労働組合によるストライキやデモで寝込んでしまうのだが、今回は財政赤字によるひどい風邪を引いてしまい、ずっと寝込んでいる。
「ギリシャさん、大丈夫ですか?」
ギリシャの見舞いに来て、成り行きでギリシャを看病することになった、恋人のリヒテンシュタインがギリシャの額から噴き出ている汗をタオルで拭っていた。
「…うん、大丈夫。リヒが、来てくれて、俺、嬉しい…」
ギリシャは熱で浮かされた頭で、何とかリヒテンに感謝の気持ちを伝えた。
「私も国として何とか差し上げられたら宜しいのですが、
兄様が「あ奴はEUに加盟してるのであろう。
ならば、ドイツやフランスやらに任せておけばいいのである。
我輩らがとやかく言う必要はないのである」とおっしゃって…」
リヒテンは少し申し訳なさそうにギリシャに国として説明した。
―スイス、殺す…!!
ギリシャは一瞬、スイスに殺意が芽生えた。
と言っても、現実問題として、『世界最強の傭兵国家』と謳われるスイスに、スローライフをモットーとしているギリシャが勝てるはずもないのだが…。
「…でも、俺は、リヒが、側にいるだけで、嬉しい…………」
ギリシャはリヒテンの手を握り、そのまま眠りについてしまった。
「私はずっと、側にいますから…」
リヒテンは握っているギリシャの手をそっと両手で包み、愛おしげに呟いた。
その後、ギリシャはなかなかリヒテンの手を離さず、リヒテンは十日近く、スイスの家に帰れなかった。
それによるスイスの猛抗議とお迎えが来るまで、ギリシャはリヒテンを離そうとはしなかった。
(終わり)