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Green

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夕暮れの頃、逢魔が時。
祓魔用品店フツマヤの庭で、杜山しえみがせっせと作業をしていた。
近くに大木があり、たくさん葉が生い茂っている。
その緑の中からアマイモンは姿をあらわした。
「やあ、しえみ」
枝にぶらさがっている格好だ。
眼が合った。
しえみはその眼を丸くする。
だが、次の瞬間、笑った。
「こんばんは」
「……つまらないですね」
アマイモンは枝を離れると、綺麗に着地した。
「もっと驚くかと思ったのに」
驚かせるつもりだった。しえみは驚きはしたが、ちょっとだった。あの程度なら失敗だ。残念である。
しえみが立ちあがった。相変わらずニコニコしている。
その笑顔を少しのあいだ眺めたあと、アマイモンは言う。
「ボクは悪魔で、アナタを襲ったこともあるんですよ?」
笑っていないで警戒したほうがいい、なんて警告、自分がするのは妙な気がするが、いつのまにか口が動いていた。
自分から逃げてほしいわけではないのだが。
しえみは笑うのをやめた。
けれども、その表情は穏やかだ。
「あなたは地の王なんでしょう?」
「ハイ、そうです」
「あなたの眷属が人間を襲うのは、人間のほうにも原因があるんでしょう?」
落ち着いた眼差しと声。
いつもの、ほんわりとした様子とは少し違う。
アマイモンはなにも答えず、眼を細めて、しえみを見る。
すると、しえみはふたたび口を開いた。
「私たち人間が、自分たちの都合で、森を無くしてしまったりしたから」
その通りだ。
アマイモンの眷属には、人間と特に争うつもりはなく、ただ平穏に暮らすことを望んでいるものたちもいる。
人間には不干渉という形で共存してきたものたちもいる。
しかし、人間たちは開発などの理由で、平和的な悪魔の暮らしている場所をつぶしてしまったりする。
たくさんの植物も根絶やしにされた。それはアマイモンたちから見れば、殺しているのも同じだ。
平和的な悪魔も怒り、それを人間にぶつけるようになった。
例えば林間合宿中のしえみたちをアマイモンが襲撃した際、その森の主は人間に同胞をたくさん殺されているので協力的だった。
だが。
「しえみ」
アマイモンは名を呼び、そして、話す。
「でも、この庭は素敵です。ここにいると、アナタがこの庭を大切にし、守り、育ててきたのを感じます。この庭の植物は、みんな、アナタのことが好きなようですよ。だからでしょうか、空気が優しい。だから、居心地がいい」
だから、つい、アマイモンも来てしまったのだ。
けれども、しえみの表情は明るくならなかった。
人間のひとりとして申し訳なく思っているのかもしれない。
でも、本当に、アナタは悪くないのに。
そうアマイモンは思い、それと同時に身体が動いていた。
しえみに近づき、その手を取る。
ついさっきまで作業していたせいで土がついている優しい手だ。
「ボクは病めるときも、健やかなるときも」
ささやくように、歌うように、しえみに告げる。
「アナタを愛し、アナタを敬い、アナタを助け、この命の限り、堅く節操を守ることを誓います」
そして、アマイモンはしえみの手を自分のほうに引き寄せ、その指にくちづけた。
しえみは眼を見張ったまま固まっている。
少しして。
「……え、えっ、ええーっ!?」
しえみが叫んだ。
だから、アマイモンはしえみの手を放す。
しえみはすっかり動揺している様子だ。しかも、その頬は朱く染まっている。
「えっ、あの、今の……!?」
「冗談ですよ」
あっさりとアマイモンは言う。
「アナタを驚かせたかっただけです」



愚かなことをしてしまった。
自分よりもはるかに短い命の者に対して、自分の長い長い命ある限り守る誓いをしてしまった。

でも、不思議と、後悔はしていない。




作品名:Green 作家名:hujio