共愛狂愛
「廉造ォ、…」
掠れた声を絞り出し、相手の名を呼んだ。しかし目の前には漆黒の闇が広がるばかりで、何も返事は返ってこない。
「頼むから、止めてくれ…頼む」
静かに閉じた瞳の端から涙が溢れ、血塗れの床に落ちる。黒い染みを作るが、赤に塗り消された。
「俺が今までどんな気持で居たと想ってるんや?」
今までの会話とはなんの脈絡も無しに唐突に聞こえる声。
「お、おい廉造!何やコレ、止めてくれ…」
最後まで言い切らぬ内に廉造の声に掻き消される。
「俺が今までどんな気持で居たか、解ってるか?好きな人が目の前に居るのに、好きな人の目の前には好きな人が居て。俺はどないしたら良えん?なぁ、愛してるのに。愛してるのに愛してるのに愛してるのの愛して愛して愛愛愛愛愛愛愛」
壊れた人形のように口から言葉を溢れさせる弟を見て金造は硬直したように動けなくなっていた。
「俺の気持ちを解れば良えやんか。ずっと、俺の傍に居れば良い」
ぐしゃ
全てが俺のモノになれば良いのに。