【ノマカプAPH】童話みたいな愛が欲しい
「ナターリヤ、さん」
どうされたんですか
男は首筋に触れた刃に、静かに問うた。
普段と何ら変わらぬ、幼子をあやすような声が、痺れるように耳の奥に残る。
すごく、好きだ
口になどしない(する必要はない)感情の在処を探すテノヒラで、男の白い肌にそっと触れた。
ナターリヤ、さん
「お前を殺したく、なった」
「そうですか」
手が、冷えていますね
触れたままのテノヒラに被さる、男のそれも劣らない程冷たい、のに。
「お前、死ぬのか」
「それは貴女次第ですね」
ナターリヤ、さん
「お前、死んだら私は淋しいか」
「それも、貴女次第です」
そのまま、男の胸元に顔を埋めた。
静かに、聞こえる鼓動。
すごく、好きだ
「兄さんと同じ音がする」
「そうですか」
からん、と音を立ててナイフが床に落ちる。
男はそれを目だけで追う。
すがりついて、目を閉じた。
童話みたいな愛が欲しい
( 王子さまなんていらないから )
作品名:【ノマカプAPH】童話みたいな愛が欲しい 作家名:ゆち@更新稀