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ある寒い日の朝のことである。

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ある寒い日の朝のことである。何のこともなしに僕は1人で庭に立ち、ただ雀がさえずりながら飛んで行く様子をぼうっと眺めていると、僕と顔が似ている彼が部屋の奥からやってきた。

「何してるの」

庭に面した縁側に立ちそう僕に尋ねる彼は、寝巻き一枚では流石に寒いのか緩く自分を抱きしめているような格好をしていた。

「用はないよ。ただ、早く目が覚めてしまったから外に出てみただけ」

僕がそういうと、彼は目に見えて呆れた表情をした。そして、縁側のしたに用意されている下駄をひっかけると、僕のそばまで来て、僕のだらんと下げられた手を握った。

「冷えるでしょ、一端家に戻りな」

彼がいう。僕は、自然と繋がれた手をみて、言った。

「これでいいよ、あったかい」

なんの脈絡もない言葉だった。でもその時確かに、彼の手の温かさが心地良かったのだ。彼は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐにいつもの不敵な笑みをこぼす。

「僕が風邪引くだろ」

そんなのゴメンだねと言いながらせっかく繋いだ手を離してしまった。もしかしたら僕は、残念だという思いが顔に出てしまっていたのかもしれない。手を離してすぐ、彼は僕の腰に手を回し、引き寄せた。体がぶつかると大人と子供の体格の差がハッキリとわかってしまって、ムッとして視線を上げると彼と目が合った。

「いいからおいで。あたためてあげるから」

彼の言葉に、かぁっ、と自分の頬が赤くなったのを感じた。僕はそれを寒さのせいにして、同時に彼の、その腹立たしい体温を下げてしまおうと思い、体を寄せ強く抱きついた。