今日もまた、俺は
時々、俺は狂っているんじゃないかという錯覚に陥るときがある。
いや、最早それが錯覚なのかどうかは俺には分からないけれど、たまらなく辛くて、苦しくて、世界には俺は本当は存在していないんじゃないかと言う感覚。
誰も本当は俺の事を見ていないんじゃないかという感覚。
こんなこと言ったらオビトに怒られてしまいそうだけど、でももうそんな俺を怒ってくれる人は、誰も居なくなってしまったんだ。
俺を、ちゃんと―はたけカカシ―を見てくれていた人が、みんなみんな居なくなった。死んでしまった。
リン、
オビト、
ミナト先生、
・・・・・父さん。
皆死んでしまったんだよ、俺を一人にして、
周りの人間は『白い牙の息子』
『黄色の閃光』の教え子
周りからの期待、
〈白い牙の子だから〉
〈黄色い閃光の生徒だから〉
寄ってくる女共も俺じゃなくて名誉、名声、顔
反吐が出る。
誰も俺を見やしない。
俺の力を やっぱり白い牙の子だから、と
見ない
俺を、
俺は、
はたけカカシなのに、
女なんて嫌いだよ、いい顔してすり寄ってきて
こっちが少し愛想よくすれば、自分に気があると勘違いする。
そして突き放せば「騙したのね」の一言。
馬鹿じゃないの?最初に騙したのはそっちでしょうが。
俺を見てないくせに、俺のこんな部分知らないくせに、勝手に理想だけ押しつけやがって。
誰がお前らに好きだといった?
愛してるといった?
俺は一度もそんなことを言った覚えはないし、そもそもそんな気なんて初めからなかったのに。
ああ反吐が出る――
でも、こうやって人を殺していると、酷く落ち着くんだ。
ほら、こうやって少しずつクナイを体に押し込めば、
「あ、がああぁぁぁあああぐああぁぁああぁっ!!!!」
ほら、すぐ呻く。
この人が苦しんでいる表情。この声を聞いていると、俺がいるという感覚を掴むことが出来るんだ。
今、ここで、俺が、はたけカカシが、こいつにクナイを刺している。
これは紛れもなく俺がやっていることで、だからこいつは苦しんでいるわけで、こいつは今クナイを刺している醜い俺を認識しているわけで、
この瞬間が堪らなく好きなんだ。
俺が俺だと認識できる瞬間。
相手が俺を見てくれている瞬間。
刹那の俺を認識できる喜び。
でも、
ふとした瞬間に
俺は狂っているんじゃないかと思う時がある、
例えば・・・ほら、オビト
お前に話かけている瞬間とか
あと、あの暑苦しい勝手に俺をライバルにしているやつと話してるときとか
自由に生きてるあいつ見てると、俺がみじめになってきてさ・・・
でも、それでも俺は、
俺を認識出来る方法を一つしか知らないから、
俺を証明できる方法をほかに知らないから、
今日もまた、
任務遂行という名を借りた刹那の俺を確認しに行く