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灯千鶴/加築せらの
灯千鶴/加築せらの
novelistID. 2063
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幸せなメビウス(表)

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幸せなメビウス(表)

『飛鳥さんっ』

一つ下の可愛い後輩は、満面の笑みで俺の名を呼ぶ。
溌剌としたその声で呼ばれる度、俺がどれだけ心を弾ませているか、お前は知らないだろうけど。

『俺、どこまでも飛鳥さんに付いていきますから!』

自分を信じられるだけの事はしてきたつもりだし、周りの視線からも信じてもらっているのを感じる、だけどどうしても最後の最後で自分が揺らぎそうになる時。
大丈夫だ、信じろ、と背中を押してくれるのがその声なんだと、いつかお前に伝えられる日が来るだろうか?

『俺、葉蔭に入って良かった。飛鳥さんの後輩になれて良かったって、本当に思います』

……たとえ一後輩として懐いてくれるだけでも。
お前に慕われているなら、贅沢は言わないさ。
プレーヤーとしてもっともっと高みに行けば、お前からの視線を少しでも長く惹き付けていられるか?

「――鬼丸、俺は、お前と――」

その先に続ける言葉に、嘘なんて一つもないのに。
まるで嘘をついた時みたいに胸が苦しいなんて、もしかしてお前への酷い侮辱かもしれないな。

「お前と――これからも、ずっと。同じピッチで戦っていたいと思うよ」




Fin.




---
『外の世界』の一年くらい前の二人かな?
何一つ嘘は言ってないのに、心苦しい飛鳥さん。
メビウスの輪であるからには当然裏側も存在します。

11.03.26 加築せらの 拝