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Rainy noise

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雨が降り続いている。
雨を嫌いな人はきっと多い、というよりほとんどが嫌いだろう。
でも、俺は結構好きだったりする。
テニスが出来なくなるのは嫌だが、降り続ける雨はどこか悲しげで切なげで、だからこそ美しさがある。
「忍足。」
窓辺で雨を眺めていると、後ろから名前を呼ばれる。
振り返ると、不思議そうに俺を見る跡部の姿があった。
「さっきから外ばっか見てるが、何かおもしろいもんでもあんのか?」
俺はそんな跡部が新しいおもちゃを探す子供のように見えて思わず吹き出してしまう。
「別に、見てておもろいことなんてなんもあらへん。」
跡部はよく分からないといったように首を振る。
「お前はよく分かんねぇな。」
「分からんくてもええよ。」
俺は跡部の前に立つと、そっとその頬に触れる。
「ただ俺が跡部が好きやってこと、知っとってくれればそれでええ。」
俺がそう言うと、跡部は驚いたように目を見張る。
「珍しく可愛いこと言うじゃねーの。」
跡部は俺の眼鏡をそっと外すと、そっと唇にキスをした。
「俺はな、雨になりたいねん。」
笑うかと思ったが、跡部は何も言わずにただじっと俺を間近で見つめていた。
「今日の天気は雨やで憂鬱やな、とか思われるみたいにどんな感情でもええから誰かにずっと気に掛けられるような存在になりたいねん。」
そう言うと、跡部はふ、と笑う。
「別に雨になんかならなくてもいいんじゃねえの?」
「え?」
跡部は俺の瞼にそっとキスをした。
「全員がってわけじゃねぇが、少なくともここに一人いつでもお前のことしか考えてねぇ男がいるぜ。」
俺は一瞬言葉を理解するのに時間がかかったが、理解してからふ、と微笑んだ。
「そんな口説き文句、自分よう言えるなぁ。」
「言えるさ、本心だからな。」
そう言ってまたキスをした。
「好きだぜ、忍足。」
そうして微笑む跡部が雨よりも綺麗で、格好よくて、言葉だけで死にそうだった。

雨はまだ降り続いている。
ずっと好きだった雨。
でも、今この一瞬だけは違った。
跡部の囁く甘い言葉を掻き消してしまう雨がただ疎ましかった。
作品名:Rainy noise 作家名:にょにょ