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Belive

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これは昔々のお話。



この世界のどこかにオールブルーという海がある。
その海には東西南北全ての海の魚が泳いでいるという。
あらゆる海の食材が揃い、全てのコックにとっての憧れであった。


とある海のとある海賊船に、一人のコックが居た。
彼もまたオールブルーに憧れる一人。

そのコックには家族のような仲間が居た。



船長、剣士、航海士、狙撃手、船医、考古学者、船大工。
この仲間たちに囲まれコックは毎日幸せだった。


コックの幸せは毎日料理を作ること。
その料理で仲間達が笑顔になること。

仲間達は毎日、毎食笑顔になった。
コックの料理は最高に美味しいのだ。

仲間が笑顔になり、
コックも笑顔になる。

こんな毎日がコックにとって最高の幸せだった。




けれど、ある日コックは料理が作れなくなってしまった。
突然のことに仲間達は悲しんだ。

コックは一人船を降りた。
家族のように大切な仲間達のもとを離れた。


コックにとって料理は命のように大事なものだ。
それを失っただけでなく、仲間達に笑顔を与えられない。
そのことが何よりもコックにとって辛かった。

仲間達は信じた。
コックがいつか必ず自分達のもとへ帰ってくると。

コックもまた約束した。
必ず戻ると。



仲間達はいつか再会する時には今よりもっと強くなろうと誓いをたてた。
大事な仲間のコックを失わないように、戻ってきたら守れるように。


時に寂しくなった。
時に辛くなった。
時に怒りがこみ上げた。
時に泣いた。
時に喧嘩をした。


船長も、
剣士も、
航海士も、
狙撃手も、
船医も、
考古学者も、
船大工も、


全員が乗り越えた。

そうして仲間は成長した。
どんどん強くなっていった。
今はそばに居ないコックに支えられて、強くなった。





時がたち、
ある日コックは戻ってきた。

とびきりの笑顔を取り戻し、
とびきりの料理を取り戻して。


仲間達は心から喜んだ。
心から笑った。


コックの料理は最高だった。

コックは言った。
美味しいかと。

仲間達は言った。
美味しいと。


コックは満足そうに笑った。



それが仲間達の見た最後のコックの姿だった。
コックの姿は幻だったのだ。


船長が言った。
コックは確かに帰ってきたと。

だが、剣士が言った。
コックはもう居ないのだと。





仲間達は悲しみに襲われた。

剣士は言った。

笑おうと。


その言葉に重なるようにコックの声がした。

笑ってくれと。


仲間達は目を閉じる。
そこには幸せそうに笑うコックが居た。
コックは笑いながら聞く、

美味しいか、と。

仲間達は声を揃えて言う。

最高に美味しい、と。


もう涙が溢れることはなかった。



コックはいつだって、傍に居る。
仲間達の傍に寄り添っている。

仲間達は誓う。


コックを世界一のコックに。
コックを幻の海オールブルーに。




コックの墓はオールブルーに浮いている。
どんな波にもまれようとも、決して沈むことはない。

建てたのは誰か、
もちろん仲間達に決まっている。


仲間達はそれぞれ夢を叶えた。

船長は海賊王に。
剣士は大剣豪に。
航海士は世界地図を完成させた。
狙撃手は勇敢な海の戦士に。
船医は何でも治せる万能薬に。
考古学者は真実を確かに。
船大工は海の果てへ。

コックはオールブルーに。




コックは海賊王のコックになった。
コックは大剣豪のコックになった。
コックは世界地図を完成させた航海士のコックになった。
コックは勇敢な海の戦士のコックになった。
コックは万能薬のコックになった。
こっくは真実を明らかにした考古学者のコックになった。
コックは海の果てに辿り着く船を作った船大工のコックになった。

コックは世界一のコックになった。





世界一のコックとはなんだろう。

世界一料理が美味いコック。
世界一レパートリーの多いコック。
世界一美しい料理を作るコック。

違う。

食べた人を幸せに出来るコックだ。
食べた人を笑顔に出来るコックだ。



コックの墓の前で泣く者は居ない。



仲間達はオールブルーに一番近い島に眠る。
いつでも会いに行けるように。
いつかまた巡り会うように。



これは世界一のコックと世界一幸せな仲間達の物語。





サンジに捧げる
      ニコ・ロビン
作品名:Belive 作家名:おこた