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城戸丈の友情。ちょっと不発。

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普段はノックなんかしないお台場小学校のパソコン室(非常時は別だが)。
中で繰り広げられている会話を邪魔しないよう待機していたが、丁度良く途切れたのでノックすると中から、どうぞ~!、と明るい声が返された。




ガラガラと扉を開けると小学生組がまるで化け物でも見るような目で光子郎と丈を見つめるものだから光子郎はついつい笑ってしまった。
ミミとタケルとヒカリは、光子郎と丈がいたことに早い段階で気付いていたようだが、他の子供達はどうやら気付いていなかったらしい。面白いものだ。皆、選ばれし子供として命を懸けた冒険を経験したのに、こんなにも違うなんて。

「大丈夫ですよ、これくらいの話は僕等の中では別に珍しくありませんから。内緒話にもなりませんよ」
「そうそう、喧嘩もよくやったしね。主にヤマトと太一が」
「ですね」
「あ、でも、僕と兄さんも結構喧嘩してましたよ」
「へ?そうなんだ?」
「だって兄さん、僕ばかり甘やかすから」

肩を竦めたタケルに、そういえばそうだったなぁ、と先代の子供達が笑う。
冒険を終えたばかりの子供達とはまるで違う関係で結ばれているのが先代達だ。大輔を中心とした今の選ばれし子供は皆、仲が良く、とてもバランスの取れたチームだ。
でも先代の八人は、正直それ程バランスは良くなかっただろうと皆が思っている。それを悪いとは全く思っていないが、良くも悪くも全員個性が強すぎた。

と、少し微妙な空気が流れ出したところで、ミミがパンパンと手を叩いた。

「さて、あんまり偏った印象ばかりを植え付けちゃうのもあれだから、ここで自他共に認める誠実の紋章の持ち主のご意見でも伺いましょうか!」
「…え!?僕!?」
「いいんじゃないですか?僕が何か言ってもあんまり意味ないですしね」
「そうそう。光子郎くんは多分私より酷いからダメよ~」

ミミの言葉に思う所があったのか、丈は少し悩んで、そもそも、と切り出した。


「そもそもこれはヤマトの話なのか太一の話なのかどっちなんだい」
「ヤマトさんはずるいよねっていう話?」
「別にずるくは無いと思うけどね、僕は。光子郎は?」
「個人的には色々ずるいと思いますけど、相対的に見ればそうでもないと思いますよ」
「個人的にって何?」
「ピエモン戦は今でも僕にとってはトラウマの一つなんです。まあ、ここでそれがわかるのはヒカリさんだけですが。……そういえば先の冒険では何だかんだとタケルくんが一番太一さんと一緒にいたかもしれませんね」
「あー……そういえばそうかも。現実世界から戻ってきた太一さんと一番最初に合流したの僕だったし」
「あ、そうだったんだ。私は最後の方で再会したからな~」
「あの時の事はいつ思い出しても身に染みるね。結局僕等は太一がいないとまとまる事すら出来ないんだっていう現実にまさに直面した時だったから」

一人欠けただけで簡単にバラバラになった仲間達。再び纏めたのは消えた一人。
結局、あの八人は特性で選ばれただけでチームワーク重視で選ばれた訳ではないから、どう綺麗に言葉を飾ってみたところで、所詮相性はよくなかったのだろう。とはいえ、それは互いへの信頼感がないとかそういう事ではなく、まあ、人数が多すぎたのだろうという事だ。

「じゃなくて、なんだっけ?ヤマトのことだっけ?」
「はっ!そう、そうよ、ヤマトさんのいいとこはどこって話!太一さんを絡めずに!」
「そうでしたっけ?」
「そうなの!」
「ヤマトはいい奴だと思うけど?」
「具体的に!」
「そうだなぁ……不器用だけど仲間想いで、正直」
「正直、ですか?」
「正直だったと僕は思う。僕だったら、言ったら空気が悪くなるから躊躇うような言葉もちゃんと口にしてたから。でもそれは別に何も考えずに言ってた訳じゃなく、言ったらどうなるかヤマトはちゃんとわかってた上で口にしてたしね。で、発言に対する責任もちゃんと取ってた。ヤマトの別行動は結局は責任に起因してたと思うんだよね」
「え、兄さんが一人で拗ねてたわけじゃないんですか?」
「タケルくん………君は自分のお兄さんを何だと思ってるんだい」
「すみません…。だって、太一さんへの変な対抗心が原因だった事も多かった気がするんですけど」
「そこはもう仕方ないんじゃないかなぁ性格の違いもあるし、考え方の違いもあるし。太一は直進タイプだけどヤマトは時には迂回を選ぶことも出来たタイプだったし。そもそも喧嘩したり離れたりしたのは何も太一とヤマトに限ったことじゃないしね。僕等は最初から仲が良かったわけでも理解し合ってたわけでもなかった。でも、時間がない中で僕等は運命共同体として、あの瞬間から仲間であることを義務付けられた。でも、勇気と友情と愛情と知識と誠実と純真と希望と光という特性だけで選ばれたにしては偶然にも相性の良いチームだったんじゃないかな。で、そのチームを纏めるに必要不可欠な必要な二人が、直球な太一と、冷静なヤマトだった。僕は、ヤマトの事を大事な仲間で友人だと思ってるよ。勿論、他の皆の事もね」

今の選ばれし子供達には不要の、義務付けられた絆。
その絆の力を最大限に発揮するのに必要なのは、太一とヤマトという、『チーム』の存在だった。二人のうちどちらか一人が欠けたらきっとあの旅はもっと違う結末を迎えていただろう。もしかしたらもっと平穏だったかもしれない。だがきっと。

「太一がいなかったら僕等は死んでたと思うというミミくんの言葉には勿論同意するけど、ヤマトがいなくてもやっぱり死んでたと思うよ」
「……………そうかもしれませんね」
「だろう?戦力がどうこうっていう話を抜きにすれば、太一とヤマト、どっちが欠けても僕等は駄目だったんだよ」
「そうですね。他の誰も、彼等と同じことは出来ない」
「そうそう。まあ、かといって、ミミくんの言ってる事も間違ってる訳じゃないんだけどね。でも、太一が前を歩くのはそれは彼の性格であって強要されたことじゃないから、それを諌める事も支える事も出来るヤマトが後ろからついていくのはやっぱり自然なことでしか無いんだと思うよ」

最初は不揃いででこぼこな八人だった。
何をしても上手くいかない。
何を言ってもまとまらない。
でも、互いを知っていって、共感して、反発して、手を繋いで、手を離して、そうして皆で歩いた。
最後の一瞬にようやく一つに纏まったかもしれない、という程度のチームワークだけど、何よりも深くて重い、大切な絆。
きっと、あの八人(タケルとヒカリは幼かったから感じた事は違うかもしれないけれど)が仲間になったのは最後の最後だった。

今の選ばれし子供達のように、選ぶ自由と精神的余裕があればもしかしたらまた違った人間関係が築かれていたのかもしれないが、終わったことを悔やんでも仕方ないし、あの極限状態だったからこそ得ることの出来た友人で、仲間で、絆だ。何よりも大切で大事な。





「しんみりしている所申し訳ないのですが」
「何よぅ京ちゃんてば…!せっかくいい感じに締めれそうだったのに」
「ですがミミお姉様!結局、ヤマトさんのフォローになってないです!」
「仕方ないじゃない、あの人って単体にすると、ネガティブでブラコンで根暗なんだもん」
「ミミくん………………」