toi toi toi!
「おはようございます、ヒバリさん!」
午前7時15分。
服装検査のために校門に立っていると、いつも遅刻寸前な筈の綱吉が駆け寄ってきた
「おはよう。ずいぶん早いね」
「チビたちが朝っぱらからドタバタやってて、目が覚めちゃったんですよ」
「早起きしたなら、服装もきっちりする余裕があっただろう。ネクタイ緩い」
「あ・・・すみません」
「・・・でも、今日は早く君に会えたし、いつもの奴らとも群れてないから、」
僕は綱吉を引き寄せ、ネクタイを結び直してやった。
「見逃してあげる。今日だけだよ?」
「あっ、ありがとうございます!」
へにゃり、と柔らかく崩れた表情に、僕の口元も自然と緩んでしまう。
「ふふ、おまじないが効いたかなぁ」
「おまじない?何の?」
「いい事が起こるおまじないです。あっそうだヒバリさんも・・・あーダメだ、ここじゃできないや」
「?」
「えっと、お昼休みに応接室伺うんで、そのときに教えますね。それじゃ!」
そう言うと、さっさと校舎の中へ行ってしまった。
(・・・時間あるんだから、今から応接室来ればいいのに)
「ヒバリさんっ」
約束通り、弁当箱を抱えた綱吉が顔を覗かせた。
「来たね。それで、おまじないって何?」
「あ、今朝のテレビで見たんですけどね」
こつこつ、こつ。
テーブルを叩く音が響いた。
「それが、おまじない?」
「はい!こうやってテーブルを3回叩くと、いい事があるみたいです。ほら、ヒバリさんも!」
言われて、僕もデスクを叩いてみる。
「・・・本当にこれだけで、幸運なんて来るの?」
「えっと、俺もよくわかんないんで・・・とっ、とりあえず、お昼ご飯にしましょう!」
はぐらかすように、綱吉はいそいそと弁当の包みを開いた。
「あ!今日のおかず、ハンバーグありますよ!結構大きめだから、半分こしましょう!」
「全部ちょうだい」
「えー嫌ですよ俺だってハンバーグ食べたい」
「エビフライと交換」
「うっ・・・」
「しかも二本」
「・・・わかりました」
そうは言ってるものの、若干目が泳いでる。
やっぱりハンバーグも食べたいらしい。
「分かった分かった、半分こね。エビフライ一本と交換しよう」
「はいっ!」
やっぱり、あのおまじないに意味はないだろう。
僕はいつだって幸せだ。
いつでも可愛い綱吉の笑顔を見ることができる、それだけで幸せ。
作品名:toi toi toi! 作家名:こっこ