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永遠の鎖

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「君は、よくいろんな奴と群れているよね。」
少し前まではそう言う僕を恐れて彼は怯えていただろう。
しかし、たくさんの闘いを経験してきたからか、僕がこういうもの言いしか出来ないのに気付いているからか、怯える様子も無くただ苦笑していた。
「友達ですから。」
彼は僕の顔を覗き込む。
「もしかして、やきもちですか?」
その質問の答えはもちろんYESだ。
だがすぐにそうだ、と頷くのを僕のプライドが許さなくてフン、と彼から目を逸らすことしか出来なかった。
その反応だけで彼は答えを察したのだろう、嬉しそうに微笑んだ。
「心配しなくても、俺は雲雀さんが好きですよ。」
彼はそう言って僕の手の上に自分の手を重ねる。
「雲雀さんはどうしてそんなに不安になるんですか?」
彼はよく僕に好きだ、と言ってくれる。
その言葉は本心で、彼が群れている奴らだって彼にとってはただの友人で、そんなこと頭ではよく分かっている。
なのに僕は不安に思う。彼が僕の側から離れてしまうのではないか、と。
いや、離れることを心配しているんじゃない。
僕はきっと彼をいつか誰かに奪われてしまうんじゃないか、と不安になっているのだ。
彼はいろんな人を惹きつけてしまう。
それが不安で不安でたまらない。
そう言葉にするのが妙に憚られて何も言わずただ黙っていると、彼は遠くを見つめるようにしてポツリと言った。
「結婚しましょうか。」
「は?」
彼が言った言葉を理解するまえに彼は無邪気な笑顔を僕に向ける。
「大人になった時、日本で男同士で結婚できるようになってるかは分かりませんが、そういう真似事くらいしてもいいんじゃないかなって。」
そう言うと、彼は不安そうに僕を見る。
「それとも、雲雀さんは嫌でしたか?」
そんな彼がとても愛しくて、思わず顔が綻んでしまう。
「嫌じゃないよ。すごく嬉しい。」
僕がそう言うとホッとしたように彼も微笑んだ。
僕はそっと自分の額を彼の額にコツン、と軽く触れ合わせる。
「一生離すつもりはないからそのつもりでね。」
「そんなの俺の望むところですよ。」
そう言って彼は今まで見たこともないような幸せそうな笑顔でクスクスと声を立てて笑った。



「やっぱり、昔の僕の勘は正しかったね。」
僕が愛していた、いや、愛している彼が眠っている棺を前に呟いた。
やっぱり彼は奪われた。ただ奪われたのは駄犬にでもパイナップルにでもなく神であったが。
僕はその場にしゃがみこみ、棺をそっと開ける。
棺に入った彼はとても安らかな顔をしていて、死んでいるとは思えなかった。
今にも起き上がって雲雀さん、と名前を呼ぶような気がしてならなかった。
こうなることは彼も、そして僕自身もきっと心の奥底で分かっていたのだと思う。
そっと、彼の頬に触れてみる。
氷のように冷たくて、マシュマロのようにフワフワだった感触も今は無く、とても硬かった。
正直、彼の死を聞いた時は悲しみは湧いてこなかった。
心のどこかで彼はまだ生きているのだと信じていたのかもしれない。
しかし、今良く分かった。

彼はもういない。

もう微笑んだり、拗ねた僕を苦笑しながら諭したり、時々会った時に嬉しそうに笑う彼はいないのだ。
そう気付いた僕は初めて涙を流した。
物心がついた時から僕は泣いたことなどなかった。
「俺、雲雀さんの泣き顔見てみたいです。それで、俺が抱きしめて大丈夫だよって慰めたいです。」
彼は昔そう言っていたことがあった。
本当のところは泣いた僕を見たかったんじゃなく、彼に甘える僕が見たかったのだろう。
僕は涙を流しながら苦笑する。
「君の願い通りになったよ。」
返事などあるはずもないのに、もしかしたらなんてありえない期待をしてしまう。
「ねえ、僕のこと抱きしめて慰めてくれるんじゃなかったの?」
僕は彼の手をとって自分の頬に触れさせる。
温もりの無いその手に僕はまた涙を流す。
「大好きだよ。綱吉。」
彼が生きている時はあまり口に出しては言わなかった言葉。
失くしてから言えるようになった言葉が今はもう届かない。
「昔、約束したよね。結婚しようって。」
僕は懐から二つ指輪を取り出す。
そして一つを綱吉に、もう一つを僕の指につける。
「僕はね、君が死んでも君を手放すつもりはまったくないよ。」
この指輪を君にあげる。永遠のしるしとかそんな綺麗なものじゃない。
これは僕が君を手放さないための鎖だ。
死んでからも君を手放せない僕はなんて愚かなんだろう。
それでも君はきっとこんなにも愚かな僕を好きだと言うんだ。
僕はそんな彼を目の前で見ているような錯覚を覚えて思わず苦笑する。
そして僕は硬く、冷たい彼の唇にキスをした。
彼はまだ僕の心に生きている。
こんなにも鮮明に彼の姿や言葉を思い出せる。
そして、それが君を失くした僕にとっての生きる糧となっている。
「僕は君に感化されすぎたのかもしれない。」
それを良しとする自分がいい証拠だ。
僕は彼をもう一度、綱吉の頭から爪先まで目に焼き付けるように見た。
「またね、綱吉。」
そう言って棺を閉める。
さようならは言わないよ。生きている時だって一度も言ったことがない。
それに君と同じ仕事をしている僕が君の後をすぐに追うことだって不思議じゃない。
だから、またね。たとえどんなに邪魔されてももう一度君に会いに行くから。

それまでこの鎖は外さないでいて。
作品名:永遠の鎖 作家名:にょにょ