ありあけの
君はいつも僕に会いに来てくれる。
一緒にいて、お茶飲んで、時々たわいもない話をして。
それだけで、とても満たされた気分になれる。
けれど、時間はいつも早く過ぎてしまう。
周りに悟られるといけないから、君を家まで送っていく訳にもいかなくて。
それ以来、夜が嫌いになった。
だって、君が帰ってしまうから。
次の日の朝になるまで、会えなくなってしまうから。
そうして柄にもなく寂しがる僕を、あの冷たい月が嘲笑っているように見えるから。
ありあけの つれなくみえし わかれより
あかつきばかり うきものはなし
(有明の月が、別れを惜しむ僕らを素知らぬ顔で冷たく浮かんでいた。
あの時以来、あかつきというものほどつらいものは他にない)