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フレンドボーイ42
フレンドボーイ42
novelistID. 608
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【完全読み切り】時

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 「レッドさん…まだ下りないんですか」
 「やっぱりユウキ、迷惑か?」
 「いえ…ただ、ずっとさみしくないのかな…って」
 「別にさみしくないわけないだろ。ただ、今の俺には…あいつらに会う資格ねえし」
 「…そんなこともないと思いますけど」
 「ありがとう。でも、俺がそう思ってるんだ。大体お前だって外に出るの、俺の買い物のときしかないじゃねえか。未だにお前行方不明って言われてラジオで呼び掛けされてるじゃないか」
 「全部録音してます」
 「電話ぐらいしたらどうだ…お前は隠れる必要ないだろ」
 「自分で必要がある、と思ってるんです」
 ユウキは、自分のバシャーモとジュプトルがかえってくるのを待って、彼らに指示を出す。
 「上に長老とミッズーがいるから、呼んできて。ご飯にするから」
 「了解」
 彼らが去ると、レッドが尋ねる。
 「なんで、お前のラグラージ、長老って呼んでるんだ?」
 「レッドさんは、幻のラグラージ、と呼ばれている、水色でも紫でもない濃い青の個体を知ってますか」
 「…ああ、何でもかなり昔の1000年生きてなお現役と呼ばれる…もしかして」
 「ええ、だから長老です」
 「お前…やっぱり凄いだろ」
 「レッドさんに言われても」
 「だってお前レックウザ動かしてグラードン・カイオーガを沈めたり、サイユウリーグで優勝したり…って普通の12歳児にはできないって」
 「レッドさんはワールドリーグ優勝じゃないですか。僕の父親すら倒してるって言うのに」
 「いや、お前も十分すごいんだってば」
 「…あ、帰ってきたみたいです」

 夕飯のころとなる。レッドはユウキのパーティを見る。進化していないポケモンが多い。遺伝学的な突然変異で、進化しない代わりにその元の能力が強化されたもの、らしい。一進化して止まったキルリアとジュプトルのほか、進化せずに止まったミズゴロウ・アチャモ・キモリがいる。他にもオオスバメ、プラスル、バシャーモ、そして先ほど話題になったラグラージ。共通するのは、ふつうの個体と色が違う、ということ。
 (このメンバーはかなり相手にとってサプライズだろうな)
 確かに、強いポケモンだけ、とか、可愛いポケモンだけ、というパーティはある。よく見るパーティだが、彼はそうではない。すべて色違いなのだ。これは彼の特殊性をかなり示しているのではないか。
 レッドのメンバーには色違いはいない。ただ、進化しないピカチュウがいるが。このピカチュウは進化しないだけでなく、雷の石そのものを嫌う。なんでだろうか、そのトラウマのカギになるのは、ピカチュウが仮に進化した場合のライチュウのフォームにあるとみてよさそうだ。かつてクチバのマチス少佐と戦ったときに、相手のライチュウを見て嫌悪感、というより敵対心をことさらあらわにむき出したからである。

 …それにしても、彼以外に味方はわずかしかいない。明日そのうち、二人が来るという。
 「あいつらもすごいというか…俺は伝説のポケモンによる問題を解決したわけではないからな」
 「そうでしたっけ」
 「そうでしたっけって…お前なあ」
 「でも、僕が思うに…伝説のポケモンとか、その他の自然の力より…怖いのはもっと別にあるような気がしますけどねっ」
 「別に?」
 「例えば…頭とか、心とか、からだとか、言葉とか、魂とか?」
 「それって…」
 「人間のほうがよっぽど怖いですって。ものを押さえつけるために爆弾を作ることも、生物兵器を作ることもできるんですから。暴走した人間は、そんなものを何の気なしに作ってしまう。あと先も考えずにね」
 「…」
 「暗くなっちゃいましたね。…ご飯冷めるとおいしくないですから、あったかいうちに食べてください」
 「ああ、そうだな」

 #

 「で、来たか」
 「ええ。ロッククライムの音が聞こえますから」
 
 そこに現れたのは、ヒビキとコウキである。
 「久しぶりですね二人とも」
 「そんなにあってなかったっけ」
 「この前からざっと1カ月ほど経ちました」
 「…で、相変わらず動きはない?」
 「今日になって動きがありました」
 「今日になって?」
 レッドがついに立ち上がる。
 「ついに、今日になって…か」
 「はい。いつの間にかシンオウにまで勢力を伸ばしてたようです」
 「…」
 レッドが沈黙するのを見計らって、コウキは自分のノートパソコンを取り出す。
 「これを見てください」
 その地図を見て、レッドとユウキが愕然とする。
 「ロケット団が勢力を持っている場所は赤いRで表してます」
 「…全国すべてのエリアじゃねえか」
 そこには、真っ赤になった全国地図が姿を現していた。
 「あいつら…いったいなぜここまで勢力を伸ばしたんだ…」
 「恐らく吸収合併ですね」
 その言葉にユウキが反応する。
 「吸収合併?」
 「簡単な話、ホウエン地方のマグマ・アクア両団の団員の中にはただ自分たちの力を見せつけたかったり、破壊活動そのものを目的として入っていたメンバーがいたようなんですよ。シンオウのギンガと同じく、ね。そいういメンバーがそのチームが解散して行き場がなくなったのを見計らって勧誘を行ったようです。で、十分勢力を持てた、って言うことで、今日から侵攻を開始する、と言っているわけです」
 「…」
 「僕はそれで、ヒビキ先輩と一緒に戦える準備ができているこちらのメンバーも確認していたんですよ」
 画面から目を話したレッドが、コウキのほうを向く。
 「何人いた」
 「ここにいる以外のメンバー全員、動けるようです」
 「…分かった」
 「どうするんですか」
 「…みんなも宝塔ならば、自分の町なんかを守りたいだろう。だが」
 彼はヤマブキ・タマムシ・コガネの三都市を指差す。
 「ここを衝く」
 「…ロケット三拠点ですね」
 「ああ、連中に指示を出している奴らはここにかたまっている。ここを攻撃しないことには、全国の末端をいくらやっつけても何の意味もなさない。取り決めてある班に分かれて、1班はヤマブキ、2班はタマムシ、3班はコガネに向かうようにする」
 「了解です。彼らにそう伝えておきます」
 コウキはそう言ってポケギアを取り出す。
 
 「全面戦闘、開始だな」
 「…」
 「どうしたヒビキ」
 するとここにきて一言も話してなかった少年ひびきが、ゆっくりと語り出す。

 「…連中…を…つぶすことが…できたとして…もし仲間を失ったり、大切な人がいなくなっていたら…どうしますかね」
 「…ヒビキ」
 レッドが何も答えられないでいる。どのメンバーにもかけがえのない人たちがいる。しかも、このメンバー同士ももう、深いきずなで結ばれているのだ。その人たちを失ったら…。
 「…あんまりそのことを考えない方がいいんじゃないかな」 
 ユウキが口を開く。
 「…なんでだよ!もしそうなったら、もう取り返しもなにも付かないんだぞ」
 「…そう思ってしまったら、もう動けないって」
 「どういう意味だ?」
 「…最悪の事態何かを考えていたら、もう動けない、って言ったんだよ。確かにそうなってしまったら…悲しいとか、苦しい、とか、そんな薄っぺらい言葉も価値を失うような事態になるさ…でも」