王様と鴉と侍と錬金術師2
「…えっ? あ、あの…い、今なんと?」
「だから記憶喪失だって言ったんだけど、どうやら打ち所が悪かったみたいだね。記憶が全部抜け落ちちゃったみたい」
前回のあの衝撃的事件からまだ1分半。
銀時の頭は完全に状況を把握できてなかった。
「しかも精神まで退行しちゃってねぇ…ま、幸いにも一般常識や何かは無事で日常には支障がないし大丈夫…って坂田さん? 大丈夫ですか?」
「…えっ? あ、はい…(大丈夫なワケねぇだろぉぉがぁぁぁ!!! 何かイヤなフラグがピンピン立ってんだけどぉぉ!? このまま話進めたら『じゃ、この子お願いね☆』ってフラグに到達するよ! フザケんじゃねーぞオイ!! そんなことになったらウチは確実に破産するよ! とにかくどうにかしてこのフラグに到達するのを避けなくては!)…あ、あの…ちょっとね…ハハハ」
そう相槌を打った後、銀時は瞬時に策を練りまくった。
だが、脳内の95%が糖分でできていて、残りの5%の知恵でそんな簡単に出てくるワケがない。
何度も何度も模索して、やっと出た答えを口にする銀時。
「あっ…あの! そういえばアイツのことについてなんか分りました?」
なぜこれかというと、それは事故のときアンディが彼の所持品のようなものをいくつか一緒に持ってきたからだ。(詳しいことは第一話を見るように)
その中にあった鞄の中身に身分証明になるもの(例えば生徒手帳とか免許証とかなんかの会員証とか)があれば後はチンピラ警察に任せて家族の元に返せばいいだけの話だ。
だが医師の言葉は、銀時の予想と期待を粉々に打ち砕いて裏切った。
「あぁ…あの後、少しだけ鞄の中を漁ってみたらね…生徒手帳(?)みたいなもんがあったにはあったんだけどね…出血が酷かったからね、中にまで血が染み込んで途切れ途切れでほとんど読めなかった」
「え゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!?(読めない!? 嘘だろオイ! 誰か嘘だといってくれ!?)」
「まぁソレで分かったといえば…あの子が『傑(すぐる)』って名前なだけ。で、ものは相談なんだけどさ…記憶が戻るまで彼を預かってくれないか?」
「…は?」
一瞬思考が止まる銀時。仕方ない、だってコレを避けるために聞いたことだったんだから。
しかし、諦めが悪くしつこい銀時はまだ策があった。
「あ…でもねぇ…ウチには居候がいるし…ホラさっきの二人なんて意外にシャイで…ギグシャクして駄目ですって」
「そうかねぇ…ってかあの三人ギクシャク所かすっかり打ち解けてるんだけど」
「え…」
そう言った医師が指を指した場所を見ると…。
「ねぇ、君名前は?」
「…え…? えっと、す、ぐる?」
「なんか疑問系だな。ま、記憶喪失じゃしかたねぇか。オレはエド、エドワード・エルリック」
「ボクはアンディ、よろしくね」
「うん…よろしく。エド、アンディ」
ホントにギクシャク通り越して打ち解けてる三人の姿があった。
「なにしとんだお前らぁぁぁぁぁぁ!!!!」
銀時は急いで二人を病室の端に移動させた。
「お前らなにやっとんじゃ! なに仲良し的な感じかもし出してんだよ(小声)」
「はぁ? 別にいいじゃんそんなの。だってアイツ面白そうだし」
「ボクも、てか銀さん何? もしかして心配してんの? 大丈夫だよ。電話しといたから」
「…はい?」
「新八にちゃんと電話したっていってんの。でOK貰った」
「アイツをウチに入れるの?」
「「うん」」
「で、どうなの? 預かるの? 預からないの?」
「「預かりまーす」」
こうして記憶喪失少年傑は万事屋の一員になりました。
めでたしめでたし☆
「なにがめでたしじゃボケェェェ!! つーかなんか無理やりまとめてない!?」
チャンチャン
作品名:王様と鴉と侍と錬金術師2 作家名:まつり