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羽根がつる

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帰ったら部屋でムクロウが変な格好をしていた。
自分は大半のことには慣れてきていると思っていたツナだったが、さすがに息をのんだ。
その、体勢である。
羽根が変な方向に曲がっているのだ。
正確には後頭部の方向に伸ばされたところで無残に止まっていた。
そんな白いフクロウが学校から帰宅したら部屋の真ん中にいたのだから、驚くぐらいしてもいいだろうと思うツナだったが、声を失っているツナにムクロウは明らかに骸の声で言った。

「な、何をしてるんです、沢田綱吉、見てないで早く助けなさい!」

なんで非難がましい口調なんだ。
しかも予想はしてたけど、命令口調だった。

それでもツナがその羽根を戻すのを割と丁寧に手伝ってあげたのは、骸がどーのこーの、というよりは鳥がかわいそう、という動物愛護の精神にのっとってのことである。あとは、ムクロウがうるさかったから。

話を聞くとどうやらムクロウは「後頭部を触ろうとしたら羽根がつった」らしい。
(鳥って、羽根、つるのか…。)
ツナは少しイヤになりながら、治ったらしいムクロウを膝に乗せた。

「つったのってここ?」

軽く指で揉んでやる。ムクロウはその指に戸惑うように身をよじった。

「…や、やめなさい、マフィア風情が」

「あ、ごめん。やだった?」

なんで謝ってるんだろーな、オレ。ダメツナだからかな。
でも揉んだときはちょっと気持ちよさそうに目を細めたのに。
ツナが床に置くと、ムクロウははっとした表情をし、さっきより焦ったように言った。

「な、なんでやめるんですか!」

「は?」

(…いや、お前、やめなさいって言ったよな。今オレ、聞いたよ…。)

また少しイヤになったツナの前で、ムクロウはフクロウにしては器用に跳ねるとツナの膝にもう一度乗った。
くいくいっ、と羽根を動かすのは、どうやら揉むのを再開しろ、の意味のようである。

「揉んでもいいです。少しなら」

(…ああ、めんどくさいなこいつ!)

獄寺のように「理解にめんどくさくなければなんでもいい」わけではない。
あれもあれでそれなりに周りは大変なのだけど、そんな「やめて、やめないで」みたいな乙女のような思考は理解に苦しむ。

それでも、目を細めているムクロウは温かく、なんとなくツナはその温度に安心した。
ムクロウはともかく、骸と「温かい」はなんだかあわなかった。
本人も今は温かくないところにいるはずだ。
そのことを考えると少しだけ胸が痛んだ。

『同情するなよ』

リボーンの言葉が頭をよぎる。
そうだ、同情なんてしてはいけない。いけないのだけど。
考え込みそうになったツナの思考を、独特の笑い声が遮った。

「クフフ…」

まあいいか、本人今、満足そうだし。
ツナはムクロウの言う「少しだけ」がちょっと長めでもいいかな、と思いながら先ほどから疑問に思っていたことをたずねた。

「そういえば、なんで後頭部なんて触ろうとしたの?」

「毛が立ってないとなんだか落ち着かないんです」

やっぱり、パイナップルの関係なのか。
ツナは妙に納得した。
作品名:羽根がつる 作家名:裏壱