sleeping beauty
とつぜんドアが開いたかと思うと、そんな気の抜けた声が部屋に響いた。
「佐久間・・・?」
どうしたんだ?
問うと、彼は緋色の目をぼんやりと泳がせながら言葉をつむいだ。
「寝らんない・・・」
その言葉に、俺は呆れるとともに小さく笑ってしまう。
最近はないと思っていたのに、またか。
ごしごしと目を擦って、俺はベッドに座りなおした。
なんだか親離れしてしまった子供が帰ってきたみたいだな。
「一緒に寝るか?」
「ん・・・」
お気に入りらしい大きなペンギンの抱き枕を腕に抱きながら佐久間はベッドに歩を進める。
いつから一緒に寝ていなかっただろう。
ベッドに乗り込んでくる佐久間を視界に納めつつ、ふと思った。
しばらくは俺じゃなくて鬼道優先だったからな・・・
毛布をかけてやってから彼の水色の髪を手で梳いていく。
無防備にさらけ出された脚に、華奢な腰。
その褐色の肌は全くといっていいほど荒れていなくて。
「三ヶ月・・・」
行き成り零れた言葉に、俺は訝しげに顔をそちらへ向けた。
「三ヶ月、ぶりだ・・・。源田・・・・・・」
嬉しそうに佐久間の頬が緩む。
そうか、三ヶ月ぶりか・・・
薄い唇から出た言葉を反芻して、少しだけびっくりする。
そんなにも長い間、佐久間と寝ていなかったというのは正直意外だった。
それまでは毎週のように部屋に来ていたし、それが普通だったから。
気持ちよさ気に細まる両目。
愛用の眼帯は部屋においてきたらしい。
こんな佐久間の姿を見るのは、確かに久々かもしれなかった。
「寝れそうか?」
「ぅん・・・」
いつもとは違う掠れた、男には珍しいアルトボイス。
それを聞き届けてから、自らも毛布に包まる。
佐久間の方を向いてその頬に触れると、その肩が小さく震えた。
それが可愛くて仕方がなくて、俺は佐久間の体をそのまま引き寄せる。
掻き抱くようにして抱きしめると、顔を隠すようにして埋めてきた。
「おやすみ、源田・・・」
くぐもった声が聞こえる。
安心しきったような、温かな声。
「あぁ・・・」
先ほどまでは冴えていた目も、今ではすっかり落ち気味だ。
どうやら俺はこの状態の心地よさを忘れていたらしい。
「おやすみ、佐久間」
sleeping beauty
(朝起きたら、
一番初めになんて言おう)
作品名:sleeping beauty 作家名:luru.M