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泣いた兎は気づかない

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君はなぜか泣いていた。

なんで泣いてるんだって聞いても何も言わない…。



Z組に忘れ物をしたことを思い出し、それを取りに教室に来たら、


誰かが泣いてる声がした。


        (誰でィ?)


Z組の女子で泣く奴なんているか?そう思いながらも教室のドアを開けた。

          
           ガラッ


そしたら君が泣いていた。…肩を震わせて、嗚咽を漏らしながら。


「うっ…う…銀ちゃん…」


自分の席に座っていて、ずっと泣いていたようだ。


神楽は俺がいることに気づいていない。


とりあえずそろっと神楽の後ろまで来てみた、


そして「何してるんでさァ」と聞いてみた。


びっくりして振り返った君の顔は、涙やら鼻水でぐしゃぐしゃで『変な顔』って笑ってやりたかった。

でも『銀ちゃん』と言った アイツの言葉が言おうとした俺を邪魔した。


…『銀ちゃん』……?


「…銀八と何かあったんですかィ?」

「…お前に話す必要はないネ」


泣いてる癖に強がって俺に話す君。


言いたくなかった。だけどそれしかアイツの泣く理由はなかったから…。


「銀八に…告白した?」


それを言った瞬間、アイツの表情が変わった。


「…ほらやっぱり」


俺は神楽の隣に座って今までの話を全部聞いた。


「っ銀ちゃんに…告白したアル…ひっく…そしたら…」

「『…俺はお前を生徒としてしか見れない』って…ひっく銀ちゃんが…」

「………」

ウソつけ…銀八…俺ァ知ってるんですぜ


いつでもアンタが目に追っているのは神楽じゃねぇですかィ。

いつも放課後「次の授業の準備の手伝い」とか言って、


神楽を国語準備室に呼んでおきながら…


本当は…


二人っきりになりたかったんだろ?


…なのにアンタが素直にならねェから神楽がこんなところで一人で泣いてるんでィ…。


…本当はこんな話聞きたくなかった。



 でも……


「そっか…話してくれてありがとな…」


俺はアイツの頭を撫でてやった。


「…うん……」

「…銀八準備室にいると思うからもっかい伝えてみろィ」

「…え?」

「きっとうまくいくから」


君が泣いていたら


ほっとけなかった


「なんか今日の沖田いい奴アルナ…」

涙を制服の袖で拭きながらそう言う神楽。

「なァに言ってるんでィ俺はいつもいい奴でさァ」

俺は精一杯の笑顔でそう言った。


…そのとき俺の顔、すっげぇ不細工なんだろうな。


「そっか…ありがとアルナ!沖田!!今度なんか奢るネ!!」

「おーそりゃどーも……」

「じゃ行ってくるネ!!」

神楽はすごい勢いで教室を出ていった。


…そして教室に取り残された俺。


「…はは……」


なんか嗤えてきた。


なんでだろういつもの俺なら


『あんな奴やめて俺にしなせェ!!』


って言って引き止めるはずなのに…


「なんか今日の俺おかしいわ……」


……分かってる。引き止めても神楽を困らせるだけ。


……銀八に言われたばっかりなのに言ってもアイツを泣かせるだけ。


それなら……アイツを泣かせる位なら…



俺が泣いてアイツが幸せになればいい


俺がつらい思いをしてアイツが幸せになればいい



「片思いってつらいでさァ……」


―――どんなに想いを伝えても相手は気づいてくれないから。―――



                       

                        ...End...
作品名:泣いた兎は気づかない 作家名:八重