恋人はやっぱりきっとサンタクロース?
昨夜は恋人が久々に来訪してくれた上に、なんとも魅力的な姿で出迎えてくれたのだ。
コートの下は紐パンツのみという出で立ちの恋人を前にして、滾らない男がいたらお目にかかりたいものだ。
―いや万一いたとしてほんとにお目にかかりなどしなくてよいのだが。
おかげで年甲斐もなくがっついてしまった。朝まで恋人のすばらしい肢体を余すところなく堪能して、寝不足ではあるものの気分はすっきりと憑き物が落ちたような心地だった。
そんなわけでロイ・マスタングは朝からすこぶる上機嫌だった。
気だるい体を裸のままベッドに横たえて、大事なところが隠れる程度にだけシーツを被せ、髪には寝癖、そして・・・がっつき過ぎて脱ぎ忘れたらしい靴下だけを履いたままの足先を晒すという、なんとも珍妙な姿を気にもせず鼻歌を歌ってしまう程には。
手には昨夜恋人を押し倒して早々にコートを剥ぎ取った後、唯一身に纏っていた紐パンツを弄んでおり、変態度を一段と醸し出していた・・・。
その時、がちゃりと寝室の扉が開く気配がし、シャワーを使い終えた恋人―エドワード・エルリックが入ってきた。
バスローブを羽織った腰の辺りを押さえつつ心なしか足取りが覚束ないように見えた。
昨夜は散々無体を働いた自覚はある。せっかくの紐パンツを脱がせる前にあんなことやこんなことをいたして堪能し、脱がせた後にももちろんあんなことやこんなことをいたしたのだ。
ロイは昨夜のことを思い浮かべてニヤつきそうになるのを苦笑に変えて、「体は大丈夫かい?」労りの言葉をかけようとした。
「あーっ!あんたまだ靴下履いたままっ。脱いどけって言っただろ!」
その前にエドワードの甲高い叫びが聞こえてきた。
「その変態ちっくな姿をいつまでも晒すな!恥ずかしいやつ~!」
「どうせ君しか見ないじゃないか・・・」
「オレが恥ずかしいの!ああしかもその手に何を持って・・・あああっ」
エドワードは頭を抱えてシャワーで火照った頬をますます赤く染めている。
ロイの手にある物は昨夜の行為ですっかり゛恥ずかしい゛代物になってしまったようだ。
「昨日見せてくれた時はあんなに大胆だったのに。また履いてくれないのかい?」
「誰が履くかっ。あんたの前では二度と履かねぇ!返せっ」
「・・・」
エドワードは興奮しきっていたのでその瞬間ロイの表情が固まり、周りの空気が数度下がったことに気づけなかった。
つまり地雷を踏んだということに。
「ほう?それでは一体誰の前でなら履くというんだ?聞き捨てならんな」
ロイの目がすっと細まり、問題の物を奪還すべくベッドへ乗り上げるようにして伸ばしてきたエドワードの手首を捕らえた。
「へ?あ・・・」
ようやくロイの表情に気づき自分の失言を悟ったが時既に遅し。
くるりと体勢を入れ替え、小柄な少年を組み敷くととびっきり悪い笑顔で言い放つ。
「昨日あんなに愛を確かめあったのにまだ足りなかったようだね。私の前でしか履きたくなくなるようもっと尽くしてあげよう」
「えっ?や、やだ!あっ・・・あぁん・・・」
―――暗転―――
そうして恋人達の長い一日が始まり、それはかなり長い時間をベッドで過ごすことになったと思われる。
靴下はいったいいつまで履かれたままだったのかはもちろん、その時放り出された紐パンツのその後の行方は誰も知らない・・・
作品名:恋人はやっぱりきっとサンタクロース? 作家名:はろ☆どき