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春コミ新刊サンプル【夢見草】

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帰宅した時に迎えてくれる姉の笑顔は、覇王にとって最高の癒しの一つだった。どんなに疲れた時でも、「おかえり」とふんわり微笑まれただけで、気力を取り戻したものだ。
 その日も部屋に入る直前まで、普段と変わらぬ光景があると思っていた。鍵の掛かっていないドアを開けると、そこには十代の笑顔が――
「ただいま」
「おっかえりー」
――なかった。
 眼前にあったのは満面の笑顔ではあるが、期待していた人物のものとは違う。姉の友人であり、彼女自身のクラスメイトでもある。名前はヨハンといったか。
「十代はどうした」
 姉の行方を聞くと、彼女―ヨハン―は肩を竦めた。その拍子に無駄にボリュームのある胸が揺れる。自分のものとは違う動きに、覇王は少しだけ視線を逸らせた。
「野暮用だって」
「野暮用とは?」
「さあ? 詳しくは聞いてないな」
「…使えないな」
 覇王が舌打ちをすると、ヨハンの綺麗に整った眉が形を変える。エメラルド色の瞳を細めると、大げさに両腕を広げて言った。
「ひどいなあ。せっかく夕飯作って待ってたのに」
「夕飯…?」
「そ」
 よく見なくても、彼女がエプロンを着ているのは目に入っていた。むしろエプロンとスリッパ以外、身に付けているものが見当たらなくて。
「まさか、その下は裸ではないだろうな」
「違うぜ」
 くい、とヨハンがエプロンの胸元を下げると、水色のレースが白く盛り上がった肌を飾っているのが見えた。むき出しになった谷間から顔を背けると、覇王は言う。
「わざわざ見せなくてもいい」
「言ってきたのはそっちだろ」
「見せろとは言ってない」
 ぴしゃりと言うと、あーとかうーとか唸り声が小さな唇から漏れた。しばらくして黙り込んだ彼女に、覇王は一つ問いかける。
「ところで、何故貴様がここにいる?」
「すごく今更だよな、それ」