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【攘夷】白夜叉と、戦争にいた人々の話

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「勝とうな、銀時。」「うち、父ちゃんも親戚も皆武士でさ、皆このままじゃ天人に城を追い出されそうでさ。そんで弟達が泣いてんだ」

俺が兄ちゃんなんだから、なんとかしてやらないとな。そう言って笑った男は偶然にも銀時と同い年で、それなのに幼い顔立ちの所為かそういう彼の方が仲間内からは弟のように扱われている。すぐに数人の男が彼を後ろから引っ叩いて笑いながら、一郎の分際で何をえらそうに生意気な、と2、3発の蹴りを入れてきた。
「しかしそうとも、俺たちがなんとかしなきゃな」
「その通りだ、我等は戦うのだ」

皆酔っている。
その日はようやくずっと幕府に申請していた、待ち続けていた援軍が到着して、一人一杯の酒と交代で二時間ずつの睡眠を得られる事になったのだ。とはいえこんな戦場で神経を尖らせたままで、もう誰もがぐっすり眠るなんて方法を何処かに置いてきぼりにしていたので、なんとなく起きたままで皆で輪になっていた。




「でもさあ、お上の援軍」
「ん?」
銀時は自分に配給された酒を極限まで水で薄めたものを煽りながら、首をかしげる。
「来てくれて良かったな。正直俺はもうお上には見捨てられていて、助けなんてこないのかと思ってた」
3回鈍い音がして、
「縁起でもないこと言うな、アホ」
「そうだぞ、阿呆」
「見捨てられてるって言うならこの酒はなんだ、あほ」
「これからも続々こうやってな、味方が増えて俺たちの睡眠時間も増えたりとか、するに決まってんだよ。アホウ」
「うっせ、阿呆阿呆言うなガキかお前ら!」
「あっれー何ですかガキですって?それこないだの高杉さんがキレた時のパクりですかーちょっと今の聞きましたあ?というわけで皆の衆一郎君に制裁!」
銀時の一声にわっと声が湧き、その部屋にいた十数人が一様に近くにおいてあった布や小物を彼に投げつけた。

「銀時、いい加減うるさいぞ」
「ちょ、お前らストップ!貴公子がキレそう!」
「貴公子じゃない、桂だ」
「まあ堅いこと言うな貴公子、確かに一郎と銀時が死ぬほどうるさいがな、あいつらもな、皆と久々にこうやってはしゃげて嬉しいんだよ…」
「そうだよ貴公子」
「貴公子」
「貴公子」
「王子」
「プリンス」
「貴様らやめろ、プリンスとか言うな」
「いやというかちょっと待てプリンスと平民ども。なんでうるさいの一郎はともかく銀さんまで含めんの。皆振り返ってよ!銀さん全然発言してないから今!」
「いやいやいやというか、俺も全然うるさくねえよ。わーわー俺に物投げつけてうるさいのはお前らだよ」
彼はまた皆に殴られた。



「というかそろそろ、寝るか?」
一人がそう提案する。

「うん、休憩もあと一時間しか無ぇぞ」
「俺は寝ねー。」銀時は小さくあくびをしながら言う。「今一時間とか半端な時間を下手に寝たら、起きた時が寝てない時より辛いからな」
「それは貴様が低血圧だからだろう」

その部屋では最終的に、寝るものと寝ないものほぼ半分ずつに分かれた。銀時はぼんやりと刀を抱きながら、今は戦線で見張りをしている坂本と高杉は生きているだろうかとやはりぼんやり考える。
(やべえ、寝そうだ)
何人かは小声で会話を交わしているようだが、遠くのほうに霞んでいくようで銀時の耳に単語として入ってこない。これはまずいとふと目線をさまよわせてみれば、自分と同じく眠らないと決めた一郎と目が合った。
「……勝とうな、銀時」
確かめるように笑った。眠たい最中に聞こえてきた先ほどとそっくり同じ何も変わらないその声が、


(……   遠い)



銀時は何事かを思ったが、失念して閉じ切ってしまった目を次に開けた一時間後にはもう、おぼろげに考えた事を忘れていた。
きっと途方も無い先の事なのだろう。

例えば幕府はきっともう助けてなんてくれない事、この次からは援軍もこないであろう事、そして恐らくこれが皆で交わす最後の酒であること、これが最後であること、

たまらなく懐かしい。もう、二度と戻ってこないものであること。そんなこと、誰だって本当は、分かっていたのだ。