末っ子サンジ②
そしてそろそろ夕食の時間ということもあり、
ナミとウソップでサンジをキッチンへと案内した。
キッチンはあまりというか綺麗という言葉からは程遠い状態だった。
そしてサンジは恐る恐る冷蔵庫のドアを開けた。
そして固まった。
「あーー・・・ナミさんや、あれはもう絶望の背中です。」
「・・・・そのようね。」
そっと冷蔵庫のドアを閉めたサンジは俯きながらトボトボとダイニングを後にした。
その後ろ姿があまりにも悲しいもので、思わず、
「「自殺!!??」」
急いで後を追うと、サンジは海を覗き込んで今にも落ちそうだった。
「キャーーちょっと止めて!!」
「ゾッゾロ!!サンジ捕まえろっ!!!」
二人の必死の叫びに近くに居たゾロが思わずガッシリとサンジを捕まえる。
なんなんだ?と顔を覗き込むとサンジは今にも泣きそうな顔をしていた。
(だからガキは・・・・)
「・・・ぞろ、魚釣って。」
「・・ぁあ?」
「冷蔵庫、ろくなのない。」
「・・・あぁ、確かにな。」
「魚、釣って。」
「「そういうことかよ!!!」」
サンジの言葉に思わずつっこんだのはナミとウソップ。
ゾロはため息をつきつつ、釣りを始めた。
「あらぁゾロ、優しいじゃない。」
「ゾロ君も、人の心が芽生えたのだな。」
「・・・・お前等なぁ。」
「あれサンジは?」
「あっ居た。」
いつの間にか消えたサンジはチョッパーとロビンと何やら話していた。
ロビンはしゃがみ視線を合わせ、チョッパーは自分の帽子を被せてあげたりしていた。
その姿を見て、思わず顔をゆるませるナミとウソップ。
「なんて微笑ましいのかしら。」
「可愛いなぁ。」
「・・・・・・。」
後ろのゾロもちゃっかり横目で見ていた。
そして3人はダイニングへと消えていった。
どうやらあのキッチンの片付けをするようで、
サンジはチョッパーとロビンに手伝いをお願いしたようだ。
「私も蜜柑取ってこようかしら。」
「俺も釣りするかな。」
「なんだ?お前等、」
「「サンジの笑顔見たいから」」
「あーーーーー・・・。」
そしてルフィは片付けをするサンジにちょくちょく邪魔という名のちょっかいを出していた。
それでもサンジも嫌ではないらしく困りつつ笑っていた。
そうしてなんとか出来上がった食事は見事なものだった。
ゾロとウソップが釣った魚をメインに、ナミの蜜柑で作ったデザート付。
見るだけで満足できそうな料理達を前に、全員のお腹が鳴る。
やはり、食べなくては。
コクン。
サンジが頷いたのを合図に全員が手を合わせ、
「「「「「いただきまーーーーす!!!!」」」」」
最初はドキドキと緊張しながら様子を見ていたサンジだったが、
すぐさま焦りだして追加料理を作り出す。
(・・・楽しいっ!!)
食事が終わり、全員でご馳走様をして話をしていた。
サンジはいつまでも慌しく後片付けをしていたのだが、ルフィが無理矢理膝の上に乗っける。
「・・・・ルフィ?」
そのまま、これからのことを話し合っていた。
まずは食料調達。サンジのためにもいつまでも釣りや蜜柑でやり過ごすわけには行かない。
一番近い島までは・・・などと言い合っていると小さい寝息が聞こえてきた。
「可愛いわね。」
「えぇ、本当に。」
「良いコックだろ。ニシシッ」
「料理はまぢでビビッたな。」
「俺は弟が出来たみたいで嬉しいぞ。」
「まっ良いんじゃね。」
ルフィの膝の上でサンジは眠ってしまっていた。
ずっと緊張していたのだろう。
そしてあの騒々しい食事だ、小さい体には重労働だ。
ルフィがあそこで止めなければ、さっそく倒れてしまうところだ。
「頑張り屋さんなのね。」
「・・・・追い出されるなんて、あんまりだわ。」
「だから、俺たちが家族になればいいだろ?」
「「そうね。」」
「「だな。」」
「・・・あぁ。」
「サンジ、お前は今日から俺達の弟だ。」
「ちょっとルフィ、サンジくん貸しなさいよ。」
「ヤダ。」
「俺も抱っこしたいぞ!!」
「ダメだっ!!」
「俺も俺もっ!!貸しやがれルフィお前だけズリィぞ!!」
「サンジは俺が見つけたんだっ!!」
「皆の弟でしょうがっ!!!」
「ベーーーーー」
「「「貸せぇーー!!!!」」」
「うふふ、ゾロ。」
「・・・・んなっ!!!」
掴み合いの喧嘩になったサンジ争奪戦。
サンジがグラングランと振り回されて眉間に皺が寄り始めたので、
ロビンがそっと取り上げてゾロに渡した。
「ゾローーッ!!ズリィぞ!!!!」
「「「ゾローーーー!!!」」」
「・・・はぁっ!!!?」
追われると逃げる、それは自然な行動。
ゾロは思わずサンジを抱いたまま4人に追い掛け回されることになった。
「あらあら。」
ロビンはその様子を楽しそうに眺めていた。
ゾロが必死に走っていると、サンジがゾロの腹巻を握り締めた。
サンジを渡しちまえばと思っていたゾロだったが、何故か4人が諦めるまで逃げ続けた。