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いちご 松林檎
いちご 松林檎
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クリスマスとたこ焼きと

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※2011クリスマス用にサイトにUPしたSSです。

舞い落ちる木の葉が、一陣の風にはるか彼方に吹き飛ばされると、元親は咄嗟に首もとのマフラーを押さえた。
「ふぇぇ~~、寒ぃなぁ~~」
 秋から冬に変わりつつある気温の寒さに元親は、着ていたブルゾンのファスナーを首元まで上げた。
「元親、大丈夫?」
 斜め上から元親の耳に落ちてくるのは、前田慶次の声だ。
 元親は慶次の声に「あ~・・・」と小さく答えながら一瞬小さな身震いをした。
「はは、今日の昼間は暖かだったもんだからよぅ、ついつい薄着で出てきちまったんだ」
「ああ、確かにね、昼間の陽気は季節の感覚を狂わすよね」
 慶次は元親の言葉に合図を打ちながら、自分の首に巻いていたマフラーをスルリと外すと、元親の肩を覆うように被せた。
「あぁ?慶次、マフラー・・・おめえが寒くなるぞ」
「ん?大丈夫だよ、元親と一緒に居るだけで俺は暖かいから」
「はぁ・・・」
 元親はサラリと、聞き逃せない言葉を言う慶次の顔を仰ぎ見る。
「なあに?元親」
 呆気に取られるように自分を見る元親に、それでも何時もの親しさで元親に問い返す慶次。
 元親は慶次の顔を見上げたまま、薄っすらと頬を桃色に染めた。
「こっ恥ずかしいことを、サラリと言うんじゃねぇ」
 元親は、真直ぐ自分を見つめてくる慶次の視線を外しながらそう言うと、肩に追加されたマフラーを自分のマフラーの上に巻きつけた。
 二人が並んで歩く歩道は街路樹が少し遅い紅葉に色づいている。
 そして、段々と辺りが夜に染まり始めるごとに、少し早めに飾られたイルミネーションが町を煌きで包みだす。
 元親は、歩いている自分たちを追い越していくように点いていく街路樹の光の粒に思わず目を奪われるように上を見た。
「はぁ、もうすぐクリスマスだなぁ」
「そうだね、もう何処を見てもクリスマス一色になっちゃったね」
「今年のクリスマスはどうすっかなぁ」
 元親が、イルミネーションの光に目を奪われたままそう呟く。
 するとすぐさま元親に慶次がこう言った。
「ねえ、元親、それ俺が予約してもいい?」
「あぁ?」
 元親は、慶次の言っている意味が分からないようにそう答える。
「今年のクリスマス、元親まだ決まってないんでしょ、だったら俺とクリスマス!それを予約するの」
「はぁ、俺とのクリスマスを予約って、俺ぁ物かよ」
「そうじゃなけどさ、元親を予約しとかないと二人っきりでのクリスマスは無理じゃないかと思ってさ」
「ふ・二人っきりっておめえ・・・・・」
 慶次の言葉をどのように捉えたのか、なぜか元親はイルミネーションから目を外すと斜め下を向いた。
 突然黙り込む元親に、慶次は一瞬外したかな?と思ったのだが、自分から視線を外すように下を向く元親のマフラーの隙間から覗く首筋が、
紅く色付いていることに気付くと顔をニンマリとさせながら元親の耳元に顔を近づけて元親にだけ聞こえるように言った。
「あれ?元親首が赤いけど、『二人っきり』で、何か想像しちゃった?」
「ええ?!」
 慶次のそんな囁きに、元親はガバッと頭を上げる。
 元親のすぐ目の前には、なんだか嬉しいかのように笑いかける慶次の顔がある。
 元親は紅い顔のまま慶次を少しだけ睨むように何か言ってやろうと思った。
 するとその時、元親より先に慶次が言った。
「ねえ、お腹すかない?元親」
「はぁ?」
 突然のフェイントな慶次の言葉に、元親が上ずった言葉を漏らす。
 そんな元親に慶次はニコリと笑いかけると、二人の先にある屋台を指差して言った。
「たこ焼き売ってる、あれ食べようよ」
「たこ焼き・・・」
 元親は、今さっきまでクリスマスとか何とか言ってた慶次が、急に「たこ焼き」を食べたがることに拍子抜けをする。
 慶次はそんな元親にニコリと笑いかけると、その場に元親を残し、たこ焼きの屋台に近づいていった。
「お待たせ、元親」
 慶次が、たこ焼きを片手に元親の元に戻ってくる。
 元親は、そんな慶次を苦笑いの表情で迎えると、街路樹脇のベンチに慶次を促し腰掛けた。
「焼き立てだよ、ほら元親」
 慶次が満面の笑みで、たこ焼きの蓋を開ける。
 寒くなってきた外気に、たこ焼きから上がる湯気が暖かそうに上がるのを見ると、元親の腹がグルルと鳴った。
「あはは、元親も腹ペコだ、よかった。」
「ち・違ぇよ、たこ焼きを見たからつい鳴ったんだ」
 思わず鳴いてしまった腹の虫の音に、元親がバツが悪そうに顔を顰める。
 そんな元親に、慶次は小さく笑いながらたこ焼きを差し出した。
「はいはい、たこ焼きは12個だから6個づつだよ」
「お・おぅ、ご馳走になるぜ」
「はい、どうぞ」
 一つの皿からそれぞれが、たこ焼きに楊枝を突き刺し『ハフ・ハフ』と息を上げながら熱々のたこ焼きに喰らいつく。
「美ん味いなぁ~」
 元親が嬉しそうにニヘラと顔をゆがめる。
 そんな元親を見て、今度は慶次がニコリと笑う。
 熱いたこ焼きをフーフーと冷ましながら、腹ペコの二人はあっという間にたこ焼きを食べつくしていった。
 そしてそれぞれが最後の一つを、それぞれ楊枝で突き刺した時、
「あ~~!!!」
 慶次の爪楊枝から、ポロリとたこ焼きが転がり落ちた。
『あ~あ・・・』
 二人はハモる様にそう声を上げながら転がり落ちたたこ焼きを見つめる。
 そして、元親の手に残った最後のたこ焼きを同時に見あげた。
「あ、こ・これ、慶次おめえが喰えよ」
「え?いいよ、それは元親の分だから元親が食べなよ」
「あぁ~、そうだけどよ、これ買ったのおめえだし・・・」
「いいよ、それ元親の分だから、ほら」
「あぁ・・そうかぁ・・・」
 にこやかな顔ですすめてくる慶次に、元親は遠慮がちにたこ焼きを口に運ぶ。
 最初熱々だったたこ焼きもいい具合に冷めて、元親は遠慮がちにそれを口に銜えた。
「ああ、やっぱり、ちょっとまって元親!そのまままって!」
 突然慶次が静止の声を上げた。
「んん?」
 元親はその声に驚き、固まるように静止する。
 すると、慶次はたこ焼きを銜えた元親の口に自分の唇を近づけると、かじり取るように元親の口からたこ焼きを半分奪い取った。
『カシッ・チュパッ』
「!?!?!~~~」
 突然の慶次の行動に、元親は凍りつくようにそのまま固まる。
 そんな、元親の横で慶次は美味しそうにたこ焼きを頬張ると、固まったままの元親に言った。
「やっぱり、最後の一個も半分このほうが美味しいよね、ね、元親!」
 そう言う慶次の横で、突然の出来事の恥ずかしさに真っ赤になった元親が固まったままの姿勢で、自分口に残された半分のたこ焼きを噛まずにゴクリと飲み込んだ。
「あ~、美味しかったね元親、たこ焼きでお腹は満たされたけどさ、やっぱり寒くなってきちゃった」
 決して人通りの少なくない通りのベンチで、慶次は固まった元親の首から自分のマフラーを取ると、無理無理そのマフラーを自分と元親の首に巻きつけて、通り過ぎるカップル達にニコリと笑いかける。
 元親は、このまま気を失ったほうが幸せかもしれないと思いながら、固まったままの身体の体温を更に上げ続けるのであった。