色付いた秋
カサカサと足元で乾いた木の葉の音が響く。
元親は、不意に踏みしめた靴の裏側に何か違和感を覚え、足を上げると自分の靴跡を覗き込んだ。
「あぁ、どんぐりかぁ、なんだぁ俺が踏んだから潰れちまったなぁ」
元親はそう言いながら、今歩いてきた自分の足跡を確かめるように、後ろを振り返り眺めた。
「つい昨日まで暑かったと思ってたのに、すっかり秋になっちまったなぁ」
そう言って辺りの景色を眺める元親の目には、緑の間に黄や橙の葉が混じりカラフルになった風景が映りこむ。
元親は、しばらくその風景を眺めると、すぅーっと大きく息を吸った。
久しぶりに訪れた山の中の公園の空気は、少し湿った土の香りと緑の香りが混ざり合い、元親の体に自然の新鮮な気を補充してくれているように感じる。
カサカサ
不意に元親の後ろから乾いた足音が近付いてくる。
元親はその足音を聞きながら、もう一度大きく息を吸い込んだ。
カサッカサッカサッ
足音と共に吸い込む空気に別の香りが混ざりこむ。
それは、元親の体に染みこんだ、安心を誘う香りであった。
「政宗、いってぇどこまで行ってたんだぁ?」
元親は、振り返ることなくそう言いながら小さく笑う。
元親がそう言うのは、最初は一緒に散歩していたはずの政宗が、何時の間にか姿を消していたからだった。
「Hey、元親、手を出せ」
政宗は元親の問いには答えず、そう言って元親の目の前に何かを突きつけた。
「あぁ、なんだぁ」
元親は、突きつけられたそれを手に取ると、 面白そうにニヤリと眺める。
政宗が元親に渡したそれは、帽子を被ったどんぐりが二つ、一本の小枝に仲良く並んでいるものであった。
「はは、なんだ、かわいいじゃねぇか」
「Ha、身と身を寄り添わせてるなんてよ、俺とおめえみたいだろ?」
「あぁ、俺と?・・・・・なんだぁ?似たもの同士・・・兄弟みてぇとかぁ?・・・」
「No~、Loverだ!恋人同士!」
「・・・・政宗、おめえ・・・・・・・・恥ずかしくないか?」
「恥ずかしい?何でだ?」
「なんでって・・・・」
直接的な政宗の言葉に、元親はほんのり赤面してしまう。
そんな元親に政宗は最強の笑顔を作ると言った。
「Hey元親、俺の言葉に一々顔を赤くするんじゃねえぜ
おめえのその赤い顔が周りの紅葉に隠れちまったら、俺は困るんだからよ」
元親のほんのり色付いた赤面は、その言葉に更に濃ゆくなっていく。
政宗は、そんな元親の頬に手を添えるともう一度言い聞かせるように言った。
「だから、これ以上色付くなって」
カサッガサッカサッガサッ
乾いた音が二つに増える。秋に色付く公園を、二人はゆっくりと歩いていくのであった。