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いちご 松林檎
いちご 松林檎
novelistID. 22718
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新年の光を浴びて

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※2012年新年あけおめ用SSとしてサイトにUPしたものです。


 冬の朝はなかなか明けぬ。
 もう明け方なのに外はまだシンッと静まり返り、耳をすませても音らしい音は聞こえない。
 政宗は、闇の中でぼんやりと浮かび上がる銀色の炎を見ていた。
「この炎は暑くはねえが、冷たくもねえな」
 そう独り言を呟きながら、銀色の炎に手を差し込んでみる。
 政宗が炎と呼んだそれは、まるで綿毛のように柔らかく政宗の手を撫でていく。
 政宗の手を優しく包む炎の正体とは、政宗の隣で深い眠りに落ちている元親の髪の毛であった。
 髪の毛が炎?と思われるかもしれないが、政宗にとって元親の髪は炎なのであった。
 初めて会ったとき、太陽の光を受けた元親の髪はその銀色に、日の光の金を宿しまるで炎のように見たのだ。
そして、夜は夜で月の光を浴びると、その髪は銀色の中に夜の青を宿し、まるで魂の灯火のようにも見える。
政宗はそんな元親の髪を勝手に炎と呼んでいた。
 そんな、元親の炎に差し込んだ手を、政宗はまるで子共が悪戯しているかのように動かした。
「ん・・んん・・・・」
 政宗の手が元親の髪を軽くひっぱっると、元親はそれから逃れるかのように寝返りを打つ。
 政宗はそんな元親を逃がさないように、布団の中でその体を引き寄せた。
 元親の体を背中から抱きしめるかのように抱きこむと、布団の中に居ても分かる朝の寒さが少し和らぐ。
 昨夜大晦日に飲み明かした後、酒の酔いが少し醒め寒さを感じ始めた体を、互いの熱で温めあったのを
政宗は思い出しながら元親の髪に顔を埋める。
 そういえば昨夜の元親の髪は、微かな油の炎の光を受けてまるで燃える火のように揺らめいていたなと思うと、
政宗はそれを左目に焼き付けるかのように目を閉じた。
 辺りの静けさと触れ合う肌の暖かさに、政宗は再び睡魔に襲われる。
 政宗の呼吸が元親の寝息に重なっていく。
 明け方の薄暗い部屋が再び静寂に包まれたと思われたその時、不意に政宗が覚醒したかのように眼を開け呟いた。
「AN?そういえば日の出の光ってのは金色だったか?」
 政宗は、そう言いながら部屋の中を見回してみる。
 すると部屋の中の薄暗さが、先ほどより若干明るんできている事に政宗は気付いた。
「HA~、やっと夜明けか」
 政宗はそう言うと、スルリと布団を抜け出して、脱ぎ散らかした着物を羽織ると外に面した戸板を開けた。
「Ha、空気が痛えほどだな」
 政宗が戸を開いていくごとに、冬の冷たすぎる空気が部屋に流れ込んでくる。
「ん・・・・ん・・・寒ぃ・・・」
 元親が、部屋の中に流れ込んできた空気の寒さに寝言のような言葉を漏らす。
 政宗はそんな元親の言葉にニカリと顔を歪めながら、眼の前の風景を眺めた。
 政宗の目の前の庭先は、明け方の薄ら明るい光にぼんやりとその姿を浮かび上がらせていく、
政宗は冷たく澄んだ空気を吸い込みながら、庭先の向こうに広がる山の頂に視線を流した。
「もう直ぐで、日が昇るな」
 山の重なりに少しづつ光の筋が広がっていく。 政宗はそれを確認すると、今だ布団で眠っている元親の傍に行き、
その体に巻きついた布団引き剥がしながらこう言った。
「元親、起きろ!日が昇る」
「ぁ?・・・うおおおおおぉ・・・寒ぃぃぃぃ!!」
 突然外気を全身で受けた元親が、飛び上がるように眼を覚ます。
 政宗はそんな元親に最強の笑みを作りながら、散らかっていた着物を拾い元親に投げ渡した。
「HEY、元親早く着ろ、新年の初日の出だ!」
 元親は、そんな政宗にめ一杯の怒り顔を作って見せる。
 だが、政宗はそんな元親にはかまいもせず、庭先に続く廊下に向かいながらもう一度言った。
「なにやってんだ?早く来い!」
 元親は、そんな政宗に渋々付き合うかのように着物を羽織ると、寒さに身を縮めながら政宗の横に立った。
「うおおぉぉ・・・・寒ぃぜ政宗ぇ~」
「AN?冬だからあたりめえだろ、それより元親、もう直ぐで日が昇る」
 政宗はそう言うと、そんな元親の腰に手を回した。
「もう直ぐで日が昇るから、少しだけ我慢しろ」
 政宗は寒さに震える元親の眼を覗き込みながらそう言うと、山の連なる先を見た。
 そして元親もそんな政宗に釣られるように山の先に視線を移した。
 二人が見つめる視線の先に、先ほどまで筋であった光が少しづつ扇のように広がっていく。
 目の前で昇るその光は、政宗が布団の中で思い描いた色とは違い、夜の青と昼の赤が反発するかのよう
なはたまた微かに交わるかのようなそんな色彩の光であった。
 政宗は横に立つ元親の顔を見た。
 政宗的に気に入らない事ではあるが、自分より背の高い元親の顔は少しだけ見上げる感じになってしまう。
 だが少しだけ下から見た元親は、その銀色の髪を朝日の色に染めて眩しいように輝き、その「炎」を
微かに揺らめかせていたのであった。
「Beautifulだな元親」
「あぁ?」
「おめえの炎はやっぱりBeautifulって言ってんだ」
「びゅーてふー?・炎?・・・・なんだぁ?それは・・・」
「HA、後でゆっくり教えてやるさ」
「ああ・・は・・・は・・はーーーくしょん!おぉぉぉぉぉ寒ぃ~~~~~」
 
 新年の朝日がその姿を全部現した後、二人は冬の朝の寒さに震えるように部屋に入り戸板を閉めた。
 そしてすっかり冷え切った部屋で布団を頭から一緒に被ると、お互いに寒さに震える顔を笑い合った。
「ははは、政宗ぇ、寒さに強いおめえでもさすがに朝の寒さはこたえるみてぇだな、ひでぇツラだぜぇ」
「A~N?てめえこそ鼻水がでてるじゃねえか、HAHAHAHAHA」
「うるせぇ、笑うんじゃねぇ寒ぃんだよぉ~」
「HA、じゃあ、今から二人で暑くなるか?」
「あぁ?」
「今年初めてのイイ事しようぜ、元親、チュッ!」
「おぁ、政宗、朝からやめねぇかぁ~」
「NO、Baby~今年も一年イイ事尽くめの年にしようぜ!OK?」
「ひやぁぁぁぁぁぁ」

 新しい年が明けた朝、外の寒さを蹴散らすように、二人はまた互いのぬくもりを感じながら体を温めあうのであった。

「A Happy New Year 元親」
「お・おぉ・・・・ぅぁぁぁぁぁ・・・ぁ」

おしまい