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デイリーエンド

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まだ少しばかり熱を帯びた風が大きく膨らんで上昇する。冬を待ち望むように空はひどく落ち込んだような色をして、グレイの雲が隆起しながら森の上にかぶさっていた。
吹き上げる風に背を押されナルトは荒く息を吐く。かきあげられた前髪をくしゃりと直しながら、ナルトは足を取る河原の石をけり上げ走っていた。耳障りな風の音、天気は崩れ始めている。今夜あたり雨が降るのだろう。ナルトは息を切らして(そのふりをして)空を見上げた。滑空する小さい黒い影が大きく舞い上がって木々の隙間に消えていく。立ち止まっていると後ろの方から砂利を蹴る足音が響いてきた。三日前は撒いてやった、だから今日はつかまってやらないとと、どこか冷めた声がナルトに語りかける。
ナルトは大きく息を吐いた。追いついてきた幾人かの子供が周りを囲み、にやけ面を晒しながら笑っている。
(また、始まる)
ナルトは上着を脱ぎ捨て低く構える。口元を引き結んで、子供達を睨んだ。

「俺にようでもあんのかよっ!」

声を張り上げると、リーダー格の少年が、でかい身体をのそりと動かした。でっぷりとした体形はさぞかし忍には不向きだろうとナルトは思うが口には出さない。ぶつかったりするには効果的かもしれないけど、と少し考え直していると、少年が太い腕でナルトの胸ぐらをつかんだ。

「何喋ってんだよ。化け物の癖に。」

少年はそう笑ってナルトの首を一気にねじり上げると、思いっきり河原に放り投げた。だが、ナルトは受け身を取らない。とれないわけではなく、とってはいけないのだ。なぜならナルトは受け身をとれるほど実践慣れしてもいない、ただのバカな落ちこぼれなのだから。
バシャンという小気味いい音を立ててナルトは思いっきり川の中に投げ出された。とがった石に頬を擦り、小さな傷ができる。頬を流れ落ちる血が生温かい。案外深いようだとナルトは考えながら跳ねるように体を起こした。こうして子供と対峙する時、幾らかの決まりがナルトにはあった。相手の子供を殴る時は、違う子供に上手く止められる殴り方をしなければならないとか、力を入れてはいけないとか。
一方的に殴られるというのにも大分慣れた。それをいかに不自然にしないかだけがナルトにとって重要なことであった。痛みはさほど感じない。苦無で切りつけられているわけでも、拷問にあっているわけでもない。ただ殴られるという行為に対して、ナルトは何かを感じてはいなかったが、任務でもこんなふうに怪我したことないのにと思うと、なんだかとても馬鹿らしいことのように思えた。
傷ついた手で上体を起こすと、近寄ってきた坊主頭の少年が大きく拳を振上げた。右頬を強く殴られて身体が吹き飛ぶ。浮遊感は一瞬だけで今度はごつごつとした石の上に着地した身体が嫌な音を立てて軋んだ。

「お前、気持ち悪いんだよ」

雀斑の浮いた色白の少年が甲高い笑い声を上げた。細くきゃしゃな体をでっぷりと太った少年の後ろに隠している。
いつの間にか口の端が切れて血が零れて、ナルトはそれを荒々しく拭った。
頬の小さな切り傷は消えてしまって、もう血は流れていない。確かに、気持ち悪いものなのかもなとナルトは少しだけ考えて目の前の少年を睨んだ。

「お前に、言われたくないってばよ!!!」

身体を反転させギリギリ届かないところに蹴りを叩き込む。ひゅうっと空気を霞める音を立てて、その反動で体を起こした。低く構えて威嚇しても、少年達は少しも堪えていないようだった。
ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべる少年達がこちらにじりじりとにじり寄って来る。後ずさりすると、ぼちゃっという音を立てて片足が水に浸かった。
殴られるな、とナルトはどこか冷静なところで考えた。無謀と分かりながら男に殴りかかったところで鳩尾に鈍痛が走る。その後すぐ、ばしゃんという音を立てて体は川に転がった。
耳元を水が流れていく音がする。もう一発脇腹に痛みが走った。蹴られたのだ。それから何度か痛みが続いたが、辛抱強く目を閉じていると、気絶していると勘違いでもしたのか子供達が遠ざかっていく足音がした。今の時期川には余り水が無い。それが幸いして、無様に流されると言うことは無かった。踝ほどの水が身体を重たくしている。足音が完全に通り過ぎて、気配が遠退くのをしっかり確認してから、ナルトは目を開いた。髪からはぽたぽたと水が滴り、上体を起こすと、ぐっしょりと濡れた水を吸った服が重かった。

冷たいなと、ナルトは思う。水浴びをして涼を取る季節は過ぎている。びっしょりと濡れた服のまま水から上がり大きな岩のそばに腰を下ろす。上着だけは脱ぎ捨てていたおかげで被害を免れていたが、腕を通す気にはなれなかった。そんな上着を肩に引っ掛けて、体のけがを確認する。頬の傷はすっかりいえて、後は赤黒い血の塊を残すのみだった。傷ついた手も、鈍痛を訴える腹も、もう少し休んで入れさえすれば治ってしまうことなんだろう。大したものではなかった。
(そうだ、俺はずっと化け物でしかなかったのだ。)
アカデミーにいれば口々に、自分を見て吐かれる言葉を思い出してナルトはぼんやりとおもった。不自然に治りの早い怪我も、人並み以上にあるチャクラも、自分を構成するいろいろなものが簡単に人知を超えている。恐怖からか、畏怖からか、人と言うカテゴリから弾き飛ばされたナルトを多数の人間は化物と呼んだ。自分は九尾ではないが、そんなこと憎しみのいえない里の人間にとってはどうだっていいことなんだろう。馬鹿馬鹿しいとずっと思っていたけれど、悲しみを乗り越えるための憎悪の対象として祭り上げられているという事実がひどく理不尽だと、ずっと同じくらい彼らを憎んできたけれど、その憎しみは、自分だって人間なのだと思っていたからこそのものだと最近ようやく気が付いた。
どうして同じ人間である自分が一人だけこんなに憎まれなければならないのかと、どうして信じてくれないのかと、そういう失望からくる怒りだった。

「本当に、俺は馬鹿だな。」

異質な男が現れたせいで感じていた仮初の穏やかな時間に、自分は一体何を勘違いしていたのだろう。低くつぶやいてナルトはゆるい秋の日差しに熱せられた岩にもたれかかった。
最初から違ったのだ。前提がそもそも、自分は人ではなく化物であって、だからこそ希望なんてものはどこにもないと分かっていたのではなかったか。男が手を伸ばしたのは自分手はなく仮初の自分であったということをどうして失念できたのだろう。

「本当に、俺は、」

胸の内が何故だか苦しいことに気づかないふりをして、ナルトはそうやって暫く、ぼんやりと暮れていく空を眺めていた。真っ赤に染まる夕日が燃えているようで、いっそ一緒にもえてしまえればいいのにと、自棄にも似たことを考える自分の弱さに、ひどく吐き気がした。
作品名:デイリーエンド 作家名:poco