二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
サヲトメ陸人
サヲトメ陸人
novelistID. 3564
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

Cross

INDEX|1ページ/1ページ|

 




【Cross】
















「こんにちは」

「いらっしゃい」


 ここのところは互いに忙しくて 菊とヘラクレスが会うのは2週間ぶり

 それもヘラクレスが菊の家に来るのは かれこれ2か月ぶりくらいになるか


「菊、会いたかった」

「げ、玄関先では・・・誰か来たら困ります」


 会って早々抱きしめられた挙句 軽くキスまでされてしまう菊


「菊、恥ずかしがり屋さん」

「貴方がオープンすぎるんです」


 菊は恥ずかしさを小言で隠して 二人で連れだって居間に向かう

 相変わらず窮屈そうに頭を屈めて 菊の後をついていくヘラクレス


「今、お茶お持ちしますね」


 そう言って菊が台所へ向かおうとした途端 ヘラクレスは彼を後ろから抱き締めた


「菊」

「何ですか?」

「したい」

「何をですか?」

「えっち」

「まだお昼ですよ、ヘラクレスさん」

「時間は別に、関係ない・・・」

「それにお昼ご飯も用意してますから」

「ご飯、いい。えっち、したい」


 普段なら 昼から求められても応じたかもしれなかった

 ただこの日は ヘラクレスが久し振りに家に来るからと

 彼が好きそうなものばかりを選んで 昼食の準備をしていたものだから

 それをいらないという言葉が 菊を少なからず傷つけたのは事実で 














































「貴方が好きなのは、私の体ですか?」








































 言ってしまってから 菊はひどく後悔した

 その言葉を聞いたヘラクレスが ひどく傷付いた顔をしていたから


「あ・・・えと・・・」

「・・・」


 何か言おうとして けれど何も言えないでいる菊に背を向けて
 
 ヘラクレスは無言で部屋を出て行ってしまったた

 
「ヘラ・・・」


 呼び止めようとした瞬間 さっきの顔が脳裏に浮かんで 思わず口を閉ざしてしまう菊
 

「あぁ・・・どうしましょう」




 深い意味を持って言ったつもりなどなく

 ただちょっと苛立ちに言葉が過ぎてしまっただけで


 会うたびに体を求められることに
 
 もともと淡泊な私はいまだ慣れることができていなくて




「私のばか・・・」



 せっかく

 貴方のためにと用意した昼食も

 貴方に会うからと悩んで選んだ着物も

 貴方が来るからと一生懸命した掃除も

 これでは全て台無しではないですか

 

「なんで・・・あんなこと」


 菊は大きなため息をついて その場にペタリと座りこんだ




















 


 ボーンと時計の鐘が鳴って 菊はぼんやりと顔を上げた


「もう・・・3時ですか」


 あれからヘラクレスの姿を見ていない 

 何て謝ればいいかがわからず 先ほどの自分の愚行を責めては泣いて

 こんな時に常日頃の自分の荒探しを始めれば 何かも足りない気がしてきて また泣いて

 当然 お昼ご飯など支度する気にもなれず 台所は手つかずのままだった


「帰って・・・しまったでしょうか」


 玄関の扉が開いた音は聞いていないつもりだった

 とにかく何でもいいから謝ろう そう思い立って菊は立ち上がる



 ごめんなさいと謝って 彼は許してくれるでしょうか

 すっかり嫌われたかもしれない あんなことを言ってしまったのだから

 いやそれよりも 体が好きだと言われたら どうすればいいのでしょうか



 胸に湧き上がってくる幾多の考えを無理やりにまとめこみ 菊はヘラクレスを探し始めた































「あ・・・」


 庭に面した縁側に ヘラクレスは座っていた

 背中を柱に預け 立てた片膝をその逞しい腕で抱えて


「ヘラクレス・・・さん」


 喉の奥がカラカラだった それでも必死に声を絞り出す

 ヘラクレスはゆっくりと顔を上げ 視線を菊へと巡らせた

 彼はその碧い眼で菊を見詰めたまま 何も言わない


「あの・・・ご、ごめんなさい・・・私・・・」

「・・・・・・おそい」


 座ったまま ひどく不貞腐れた表情で ヘラクレスはそう呟いた


「ごめんなさい・・・ごめん、なさ・・・・い・・・」


 詫びているうちに 菊の瞳からは涙があふれ出していた

 許してもらえないのではないか 嫌われたのではないか 悪いのは自分だ

 胸が締め付けられるような苦しさに 泣いても仕方がないのはわかっていても


「・・・・・・」


 ヘラクレスは泣きだしてしまった菊を見て 静かに立ちあがった


「俺・・・悲しかった」

「ごめんなさい・・・ほんとに、ごめんなさい・・・」

「・・・・もう、いい」


 菊の小さな体を抱きしめて ヘラクレスはそう言った


「許して・・・くださいますか?」

「もう・・・あんなこと、言わないなら」

「・・・言いません」

「・・・・やくそく、ね」

「はい」

「あと・・・」

「はい?」

「俺も・・・悪かった、から」


 その言葉に驚いて菊が見上げると ヘラクレスは少しバツの悪そうな顔で視線を逸らした


「ご飯、いらないって・・・ごめんなさい」


 最後のごめんなさいは やっと菊の耳に届くか否かの小さいもので

 けれど 彼が自分の気持ちに気づいてくれていたことに 菊はたまらなく嬉しくなって


「・・・いいですよ」

「・・・じゃぁ、仲直り」


 二人の唇がどちらからともなく重ねられ すぐに深い口づけを求めあい

 息つく間さえ惜しむように 腕は精一杯相手を抱きしめて


「っ・・・きく、いい?」

 熱っぽい視線と声音で求められ 菊には断る理由など何処にもなくて

 はい そう答えようとした そのとき















































 ぐぅぅぅぅぅ














































「わ・・・」


 ヘラクレスの腹の虫が盛大に鳴いて 甘いムードを一気に吹き飛ばした


「・・・っぷ」


 小さく噴き出す菊に ヘラクレスは顔を赤くして自分の腹を叩く


「ご飯、食べてからにしましょうね。すぐに準備しますから」

「・・・・・・うん」


 菊は楽しそうに笑いながらそう言うと ヘラクレスの手を引いて台所へと向かった







 その夜 二人が仲直りの続きをしたのは 言うまでもないこと。


 

 
  


 

 

 

 
作品名:Cross 作家名:サヲトメ陸人