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フレンドボーイ42
フレンドボーイ42
novelistID. 608
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Tired Volvox

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 群像劇を見ているような、この町の人々はただ最近のようにわらわらと動き回るだけの存在。社会なんてものを動かすためにどこか冷ややかな空気に包まれたこの海を動き回るグッピーたち。全てのものはただ摂理に沿って動き、すべてのものは摂理に沿って、組み入れられたり排除されたりする。自然淘汰というやつだ。人間は自然に打ち勝ったと思った。それはノアたちが方舟に乗って神に信託を得てからである。神、それは自然の代表でなかったか。神、それは自然そのものではなかったか。しかし、それは人間の存在の限界を示していた。人間が世界から独立するならば、全てのものが富と権益を平等に受け取れる世界が必要だということに気づかされるはずだ。それに、ユートピア主義者たちやマルキシストたちは気づいていたはずだ。そうするほか人間は、世界とは全く違うものになることはできないはずである。
 つまるところ、階級社会というものは、それ自体が自然なのだ。学校社会という閉鎖された空間を見ればわかる。先生は平等を語るが、先生の眼の届かぬ所では、子供たちは一定のコミュニティを作り上げる。コミュニティ同士は互いに、戦闘や抗争・および協力体制以外ではたがいに干渉しない。それぞれのコミュニティはその中にリーダーを持つ。リーダーのもと、その中に特権階級、中流階級、そして被使役階級に区分させられる。そうして、それぞれの階級区分に従った行動を強要され、その掟に叛き、または抗ったものはコミュニティからの攻撃を受ける。大きな生き物として、それぞれの防衛反応が起きるのだ。
 ボルボックス、という生き物を知っているだろうか。群体を形成する緑藻の一種である。無性生殖によって増殖した多数の個体がくっついたままで、一つの個体のような状態になっているものなのである。その体が複数細胞から出来ているものの、細胞分裂によって成長する多細胞体ではない。彼らの細胞数は成長の途中でも一定の数を保つ。母群体の細胞がそれぞれに分裂を繰り返し、娘群体の形が出来上がると独立し、そのままの細胞数で成長する。この生物種が興味深いのは、このそれぞれの個体は、それぞれ役割を分けているのだ。大きな生殖細胞と小さな非生殖細胞にはっきり分化し、小さなものは排せつや栄養摂取などを行う。大勢の個体が集まって、一つの個体のようなものを形成する。
 猿も、よくコミュニティを形成する。多くの生き物種は群れを作る。ただしいちばんここで語りたいのは、複数体集まって生き物のように生活する、というところに注目すべきだ、ということだ。
 人間はよく一人では生きていけないといわれる。そして、人という字を注目してみよう。

 片方のやつを、もう片方が支えているのだ。

 つまり、まだ未開の段階で、もうすでに、支配階級と被支配階級に分化していたのだ。
 そういうものなのか。ツかれた目をしたキミたちは、さっぱり笑顔をみせないね
 
 生をただ追いかけて、群像の中にただ引きこもり、そして危険因子を排除する。そういう生き物であることは、人間も変わらない。それは、資本主義を取り入れた人間の行動を見ればよくわかるであろう。そう、人間は自然から、まったく独立できないのだ。本能から解放されて、とか言っていても、本能的に生きているのだ。そうでありながら、うやむやになって本能というものは幽霊のように化してしまった。本来あるべき姿に人間は戻ることができなくなっているだろう。人間は、自然とうまく折り合いをつけられないまま、自然の飼い犬と化しているのだ。それが人間のすべてなのだ。

 それが人間のすべてなのだ。
作品名:Tired Volvox 作家名:フレンドボーイ42