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でんでろ3
でんでろ3
novelistID. 23343
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目玉……

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まず、見えたものは、ドベッとした平面だった。これは何だろう? どっかで見たことあるな? と思って、よくよく考えてみると、どうやら自宅のフローリングの床のようだ。床に這いつくばって何かを探した時のことを思い出す。
 じゃあ、俺は、今、床に横になっているのか? いや、待てよ。だったら、床は縦に見えないか? 床は、なぜか水平で、しかも、目線が床とほぼ同じ高さなのだ。この状況を実現するには、まず、床に穴をあけ、しかる後に、そこに入って、頭だけをちょっと出す必要がある。

 俺そんなことしたか?

 いやいや、それ以前に、今のこの状況に直結する記憶が根こそぎ無いんですけど……。
 その時、ふと、あるものに目が留まった。
 人間の足だ。なぜ、すぐに気付かなかったんだろう? 立っている人間の足。靴下とズボンをはいている。誰だ? 視線は上に……、おっ、動く。こんな低いところから人間を見上げたことなんかないから、良く分からないが、服に見覚えがあるような気がする。体型もなんだか見たような? 角度的にきついが顔……お、俺? なんで? なんで、俺が俺を見上げているの?
 信じがたくて、立っている人間の顔に目を凝らすと……、あれ? 右目が無い。何というか、えぐられてるとかじゃなくて、イラストで言うなら描き忘れたというか、フォトレタッチソフトで修正して消したみたいに、右目があるべきところに何もない。
 なんだ? こりゃあ? そう思いながら、ちょっと視線を動かすと、左目はちゃんとあるようだ。「ようだ」というのは、左目が閉じられているからだ。
 しかし、待てよ。本体から分離してしまっている右目の映像が認識できるのなら、普通にくっついている左目の映像が見られないはずがない。とりあえず、左目を開こう。
 しかし、今の私は、目だけなので、口は無いようだ。声をかけることはできそうにない。ここは、いちるの望みをかけて、念じるしかない。
「あー、あー、左目君、左目君。聞こえますか? 応答して下さい」
「……。……。……おぉっ! 右目、気が付いたか」
「これは、どういう状況だ? それから、なんで、お前、目ぇつぶってるの?」
「あー、ごちゃごちゃ説明するより、見せた方が早い」
その瞬間、視界がとても気持ち悪いものになった。2つの画像が重なって見えているようだ。
「なんだ、この気色悪い視界は?」
「俺の見た視界と、お前の見た視界が、重なってるんだよ」
「あー、気持ち悪」
「俺が目を閉じていた理由は、これで分かったろ」
「ああ」
「それで、今の現状はというと、俺の視界の方を見て欲しい」
「あぁ?」
「床に丸いものが転がっているだろ」
「ああ」
「それが、お前だ」
「へ?」
「いや、だから、どういう訳か知らんが、君は顔から外れて床に転がっているのだよ」
「っえ、えぇっ!?」
「いるのだよ」
「いや、繰り返すんなら、全部繰り返せよ」
「ほぅ、この状況で冷静にツッコむとは、やるな」
「その前に、ボケるんじゃねぇ」
「さて、どうしたものか」
「どうしたも、こうしたも、早く拾い上げてくれよ。踏み潰されそうだし、ネズミとか来たら、どうするんだ」
「そうしたいのは、やまやまですが……」
「なんだ? 体が動かないとか?」
「いや、君の画像が僕にも見えるように、他の身体の各パーツたちも僕らの映像を見ている」
「各パーツたち?」
「ここからは、私が話そう」
「お前は?」
「私は右腕だ」
「なんだか頼もしいな。文字通り頼れる相棒といったところか」
「そして、僕は恋人さっ」
と、右手が茶々を入れてきた。
「侘しくなる下ネタはやめろっ」
「まぁ、バカはほっといてだな……」
右腕が話を戻す。
「我々はお互いにコミュニケーションは取れる。だから、ある程度の連携は可能かも知れん。だが、脳がコントロールするような複雑な動きは、無理ではないかと思われる」
「なに? そういえば、脳の奴はどうした?」
「それが全く連絡が取れない」
「Oh! 脳!」
またまた、右手が茶々を入れてきた。
「連絡が取れない?」
「正確に言えば、いくら呼びかけても応答がない」
「っっっっっ! じゃあ、脳なんかあてにしないで、お前たちだけで動いてみろよ。『かも知れん』とか『思われる』とか言ってないで、やってみようぜ!」
「それが、そうも行かないんだ」
左目が口をはさむ。
「これも、あくまで仮説の域を出ないのだが、組み木のパズルってあるだろう。立体の木片が幾つかあって、組み立てると立方体とか球になるやつ」
「それがどうした?」
「今の我々の体が、その状態ではないか? と、右腕は言うんだ」
「あとは引き受けよう」
右腕が引き継ぐ。
「そして、組み木のパズルというものは、すべてのパーツがカッチリとはまって、初めて安定した状態になる。1つでもパーツが外れると、崩壊が始まってしまう」
「つまり、なんだってんだ?」
答えは分かっているのに、俺は聞かずにいられなかった。
「つまり、お前というパーツが抜けたことによって、今、この身体は非常にもろくなっている可能性がある。下手をすれば身体がバラバラになって崩れ落ちるだろう」
「そ、そんな! まさか! ありえない!」
「君がそうして床に転がっている時点で、何でもありうると言える」
「だからって、じっとしていても仕方あるまい。ここは、一か八か、俺を元に戻して、安定を図るべきではないか?」
「俺も、その意見に賛成だね」
なんだか鼻にかかった声が割って入った。
「お前は?」
「鼻だよ」
「……オチが読めた」
「なんだってんだよ。俺が出て来ちゃいけねえのか? まったくよー。ははは、……、は、は、はーっ、っっっっっ、くしょん」
鼻の奴が、盛大にくしゃみをした。他のパーツとの連動は、弱まっていたが、やはり同じ身体である。大なり小なりつられて動く。それによって、俺の本体は、一気に崩れた。そのパーツたちは、俺の上に落ちてきた。俺の視界は真っ暗になった。……。

 ……。わしは、目を覚ましてガバッと起きた。恐ろしい夢じゃった。息は乱れ、脂汗をかいていた。なんで、あんなものになった夢なんか……。
 もうすっかり朝か。息子を起こすとするかのう。
「おい、鬼太郎。もう朝じゃ。起きろ」
作品名:目玉…… 作家名:でんでろ3