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堕落者13

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「跡部、すごかったなあ。立派だったなあ。鈴相手に受け答え出来てたんだもん、まだあんなに幼いのに」
 受け答える言葉が悪かったとしても、その言葉遣いは礼儀正しかった。それに、立ち直りも早い。あの年でそう振舞うのは、本来不可能だろう。
 あんな事があっても、それから、跡部の私に対する態度は変わらなかった。いつも通り一緒に遊んでくれる。
保育参観や交通安全指導、避難訓練といった、幼稚舎の行事も過ぎ、五月の終わりには遠足があった。私と跡部はバスに揺られ、とある公園に連れてかれていた。いつの日かの歯科検診や身体測定と同様、学年毎に日をずらした遠足で、むーちゃんはいない。昨日、今日続けて、私と跡部は昼間むーちゃんと会っていなかった。
私がジャングルジムの頂上に上り、鉄の棒に腰を掛けると、跡部も隣に来る。
「君は高いところが好きなのかい」
「まあね」
「だから、あんなマンションに住んでいるんだな」
 この頃になると、跡部はマンションというのがどういった建物なのか知っていた。
「ところで、これから何して遊ぼうか」
「うーん、特に、思いつかないかな」
 折角この小さな体を持ったので、ブランコぐらいは乗りたい、かもしれない。けれど、ブランコは皆が並ぶほどの人気だった。並んでまで乗る気にはなれない。
「じゃあ、僕はりんと話したいぞ」
 私は何も言えないでいたが、隣で跡部は話し出した。
「僕、この頃、りんにかんしゃしてるんだ。だから、礼を言うよ、ありがとう」
 いきなりそんな事を言われても、何のことか見当つかない。
「何で?」
「りんは、最初にりんの家に行った時の事、覚えてるかい」
「うん、覚えてる」
 忘れるはずがない。あんな事をしておいて、忘れるものか。
「僕、あれからかえった後に、うちのしつじに言われたんだ。『れんらくをください、できれば前日までには。つたえて下さると、ありがたいです』ってね」
 私は相槌を打つ。
「君のお父さんや君が言ったことが、まちがいじゃなかったって、このときやっとわかったんだ。僕は、君たちの言うことをりかいしていたつもりだったけど、なっとくまではしてなかったんだって、そのとき、きづいたんだ。だから、ありがとう」
 私は何も言う事が出来なかった。何も、言える訳がなかった。だから、ただ、相槌を打つ。
「君、僕に、きまってないきまりごとがあるって言ってくれたよね。それから、僕も、いろいろ考えるようになった。考えられるようになった。僕は今までずっとべんきょうしてきたから、しょうじき、君よりしらないことはないとおもっていたときがある。けれど君は、どうやら、僕がしらないことをしってるようだ」
 跡部はそう言って微笑んだ。
「あれから、しつじたちが自分に何をしてくれているかを考えるようになって、僕はおどろいたよ。いしきするってだいじなんだね。君のお父さんのことばをとおして彼らを見てみたら、今まで見えてなかったことが見えてきたよ。ほんとうに、あのしゅんかんは、おどろいたなあ」
 懐かしむように、彼は言う。
「あれから、べんきょうもよくはかどるんだ。まえよりもっとたのしくなって」
 そう言って私に振り向いた彼は、言葉を失った。
「どうしたの、りん」
 私は泣いていた。早く止めなければ、そう思っても、涙は溢れ出て、ついには、しゃっくりを上げ始める。
「ごめん、ごめん」
 早く、涙よ、止まれ。これ以上、彼に迷惑を掛けるな、止まれ。私には、謝ることしか出来ない。
 彼は子供だ。本来の私より、十五歳年下の子供だ。そんな子供へ文句を吐けてしまった私に、彼はあまつ、感謝した。自らを反省し、成長していく彼に、私はなんて身の程知らずだったのだろう。
 涙を拭こうとして手を放し、体が傾いた。咄嗟に身を立て直そうと勢いづいて、体は前に放り出される。手を掴み戻すのは遅く、跡部の叫び声が耳に付く。鼻先に鉄棒が掠り、私は咄嗟に右手を付いたが、腕には鈍痛が走った。




2009/01/11
作品名:堕落者13 作家名:直美