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甘え下手な貴方と僕。

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「帝人。」

久しぶりに訪れた静雄さんの部屋に少しドキドキしながらも静雄さんの隣に座ると、低いけど優しさを感じさせる声で静雄さんは僕の名前を呼んだ。
「どうかしましたか?静雄さん。」
僕が尋ね返すと、静雄さんは少し赤くなった頬を掻いた。
「その、ここに座ってくれないか?」
そう言って静雄さんはポンポンと胡坐を掻いた自分の足の上を叩いた。
え?と僕が固まると、少し困った顔をして静雄さんは俯いた。
「その、嫌だったらいいんだが・・・」
「え、いや!そうじゃないです!ちょっと驚いただけですから・・・」
僕は頬が熱くなるのを感じながらそう弁解すると、恐る恐る静雄さんに近づき、ゆっくりと静雄さんの足の上に座った。
「ええっと、これでいいですか?」
「お、おう・・・」
それ以上何も言えなくて、そのまま黙ったままでいると、静雄さんは後ろから僕のお腹の前に両腕を回した。
後ろから抱え込まれるような態勢になり、ドクンと心臓が大きく跳ねた。
鼓動は止むことなく高鳴り続けていて、今にも静雄さんに知られてしまうのではないかと心配になった頃、ようやく静雄さんが口を開いた。
「最近、あまり会う機会なかっただろ?」
僕は小さく頷いた。静雄さんの仕事が忙しく、休みがあっても僕自身に用事があったりでなかなか会えなかったのだ。
「電話とかしようと思ったんですけど、静雄さんの仕事が終わる時間って分からなかったし、それに疲れてるから迷惑かなって思って。」
「そんなわけないだろ!」
怒ったように少し声を荒げた静雄さんは、その言動とは裏腹に優しい手付きで僕の頭を撫でた。
「・・・ずっと前から言おうと思ってたんだけどな。」
そっと静雄さんを見上げると、寂しそうな顔をして僕を見つめた。
「お前ってあんまり俺に甘えてこないだろ?だから、その・・・」
そこで一瞬口篭ると、静雄さんは僕の方に顔を埋めた。
「なんつーか、もっと甘えて欲しいんだよ。遠慮とかしないで電話とかメールでもいいからしてくれ。会わない間臨也とかに言い寄られてないかとか俺のこととか嫌いになったんじゃねぇかって不安になる。それでなくても俺たち、その・・・恋人なんだからよ。」
どことなく拗ねた調子で語る静雄さんが可愛くて、僕は小さく笑った。
「あの、じゃあお言葉に甘えてさっそく甘えても・・・いいですか?」
「ん?ああ、構わない。」
僕はそっと静雄さんの腕をすり抜けると、一度立ち上がって静雄さんと向き合う格好になるように膝の上に座り直す。
「こっちの方が、静雄さんの顔よく見えますから。」
いたずらっぽく僕が笑って言うと、静雄さんは頬を少し赤くしてそうか、と小さく呟いた。
「あと、もうひとつ甘えさせてほしいんですけど・・・」
「・・・何だ?」
「抱きついても、いいですか?」
静雄さんはさっきよりもより一層顔を赤くして頷いた。それを見て僕はさっそくぎゅうっと静雄さんに抱きついた。

━━━━静雄さんの匂いがする

少しタバコの匂いがして、でもそれは不快を与えるものではなくて、僕が今静雄さんの腕の中にいるのだと如実に感じさせて心地よさを感じながらも少し気恥ずかしかった。
しばらくそのままの態勢でいると、静雄さんが身じろぎをする。
「あー、その・・・キスしても、いいか?」
僕は律儀にそう聞いてくる静雄さんから少し体を引いて微笑んだ。
「もちろんです。僕も甘やかせてもらいましたから。」
僕の言葉に微笑んだ静雄さんの顔を鼻が触れるくらいの距離で見て、ああやっぱりこの人はかっこいいななんて思いながらそっと唇を重ねた。
作品名:甘え下手な貴方と僕。 作家名:にょにょ