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愛情表現=破壊衝動

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「テメェ・・・帝人に何しやがった?」
怒りを孕んだ声でそう言った静雄の目は目の前に立つ臨也の足元に傷だらけで倒れている帝人に向けられていた。
「別に何も、しいて言うなら愛情表現ってやつかな。」
まるで舞台に立った役者かのように両手を大きく開いて語りだす臨也をいつもはそれを遮り、自動販売機などを投げるところを静雄は何も言わず臨也の一挙一動を睨みつけていた。
「シズちゃんさぁ。人を好きになるってどういうことだと思う?大切にする?守ってあげる?まぁそれもあるかもしれないけどさぁ、俺が思うに人を好きになるのって結局は破壊衝動と同じなんだよね。俺は人を好きになったらその人を壊したいんだよね。めちゃめちゃにして一人じゃ立ち上がれなくなるくらい身体的にも精神的にも全部を壊して壊して壊し尽くしたい。だってそうすればその人は他の誰も見なくなるし、本当に俺の物になった気がするしね。」
「それがなんだっていうんだ?そんなのは帝人を傷つける理由になんかなっちゃいねぇんだよっ!!」
今にも臨也を殴り飛ばしたい衝動を抑えながら怒鳴る。今手を出せば帝人がどうなるか分からない。
「あれ?今ので分からなかった?これだから怪力だけで単細胞な化け物は面倒だよねぇ。」
肩を竦めて言う臨也の話し方や仕草はいつもと変わらなかったが声のトーンが少し低く、いつも以上に不安や恐怖を煽るような雰囲気を醸し出していた。
「俺はさぁ、帝人くんが好きなんだよ。」
眉を顰めた静雄を見て、楽しそうに臨也は笑う。
「帝人くんをどうして好きになったのかとかそういうくだらないこと聞かないでね。俺だってこれだっていう感じの答え持ってないし、例え持ってたとしてもシズちゃんなんかに教えるつもりもないしね。とにかく俺は帝人くんが好きだ、愛してる!これは必然であって偶然なんかじゃないんだよ。そう、運命だったんだよ!なのに・・・」
さっきまでの笑顔をスッと消すと、静雄を鋭く睨みつける。
「帝人くんは間違った。俺じゃなくてシズちゃんを選んだ。俺に言うべきだった言葉を全部シズちゃんに言って、俺にするべき態度をシズちゃんにとった。それって許されるべきことじゃないんだよ。だからさ、君たちが付き合い始めたっていう胸糞悪い情報が入ったときに思ったんだよ。なんでもっと早くに壊しておかなかったんだろうって。そしてこうも思った。今からでも遅くないんじゃないかってね。」
臨也は足元で倒れ伏す帝人を愛しそうに抱き上げた。そしてどこからか出したナイフで帝人の頬を軽く切りつける。
「・・・っ!」
ピクと反応した帝人に臨也は笑みを浮かべると、頬から流れ出した血をそっと舐めた。
「あははは!反応しちゃって可愛いなぁ。」
臨也はうっとりとしたように微笑んで優しげに帝人の髪を撫でる。
「まぁ俺が思う愛情表現てやつを語った訳だけどさ。結論言うと、単に俺がセックスとかで得られる快楽っていう甘美な感情に溺れる帝人くんよりも、不安だとか恐怖だとかの感情に怯えたり、痛みにのたうちまわるような帝人くんの方が好きってことかな。ましてやそこら辺にいる女みたいに淡い恋心を抱いている帝人くんなんてつまらないじゃない。」
臨也は帝人の唇に自分の唇を重ねた。
「臨也、テメェっ!!」
今度こそ殴ろうと拳を振り上げた時、臨也が帝人を引き寄せたのを見て動きを止める。このまま腕を振り下ろせば帝人まで傷つけてしまう。ぐっと堪える静雄を見て愉快そうに臨也は笑う。
「本当、くだらないよねぇ。そうやって傷つけないようにって気を遣ってさ。それで帝人くんを好きだっていうんだから本当笑っちゃう。シズちゃんは帝人くんが何を好きで何が嫌いなのか知らないんだろ?本当、それで帝人くんの恋人だなんてよく言えたよね。」


ねぇ、帝人くんは非日常が好きで日常が嫌いなんだろ?
シズちゃんはさぁ、化け物じみた力以外、普通の人よりも人間らしい感情しか持ってない人間なんだよ。
つまり、君が嫌ってる日常そのものでしかない。
だからさ、君は俺を選ぶべきだと思うんだよねぇ。
非日常を手に入れたいんだったらさ、俺みたいな狂気の塊と付き合った方がいいんだよ。
まぁこれはただのこじつけだけどさ。要するに、俺が言いたいのは・・・


「俺がこんなに帝人くんを愛してるんだから、帝人くんももっと俺のことを愛するべきだよねぇ?」
作品名:愛情表現=破壊衝動 作家名:にょにょ