二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

逃避行!

INDEX|1ページ/2ページ|

次のページ
 
目の前に広がる惨状に帝人はため息をついた。情報屋と喧嘩人形が織り成す壮絶な喧嘩は池袋に来た当初はこれ以上の非日常は無いと嬉々として見ていた帝人であったが、今では飽きるほど見る機会が増え、しかもその原因が不本意ながら自分にある為、素直に喜べなくなった。さて、これが日常化することになった理由となる出来事は今から1週間ほど前に遡る。




放課後。いつもなら正臣と杏里と帝人の三人で帰るのだが、この日は二人とも用事があるだとかで帝人は一人で帰ることになった。ちょっと寄り道でもしてから帰ろうか、などと考えながら歩いていると、帝人の前にいつものように黒いコートを身に纏った情報屋の青年が立ちはだかった。
「やぁ、帝人くん。こんな所で会うなんて奇遇だねぇ。」
果たして情報屋である彼とここで会ったのが本当の偶然であったのかは疑わしかったが、あえてつっこむようなことはせず、こんにちはと挨拶をする。
「臨也さんは池袋に何か用でもあったんですか?」
帝人は嫌味なほどにっこりと笑って尋ねる。
「あはは、帝人くんて結構ひどいよね・・・今日は帝人くんに用があって来たんだよ。」
そう言って臨也は帝人の顔に鼻が触れそうなほどに顔を近づけた。
「俺、帝人くんのこと好きになっちゃったみたいでさぁ。よかったら俺の恋人になってくれないかなぁって思って。」
買い物に付き合ってくれないか?みたいな軽いノリで言う臨也に帝人は笑顔を絶やすことはなかった。
「冗談は顔だけにしてくださいよ、い・ざ・やさん☆」
「毒舌だなぁ。そんなところも好きだけど。」
さて、この厄介な男をどうしようか、と帝人が考えていると、突然帝人は腕を引っ張られ臨也の胸に飛び込むような態勢になってしまう。何するんですか、と抗議しようと口を開きかけた時、さっきまで臨也と帝人がいた場所にメゴッという鈍い音と共に止まれの道路標識が刺さっていた。
「いぃぃぃぃぃざぁぁぁぁぁやぁぁぁぁぁくぅぅぅぅぅん。テメェ、竜ヶ峰に何の用だぁ?」
どうやらこれは静雄さんが投げたものらしいとまぁ考えなくても分かるようなことを帝人は臨也の腕の中にいるということも忘れたまま呑気に考えていた。
「シズちゃんさぁ、こんなの投げて俺の近くにいる帝人くんに当たっちゃうかもとか考えられないわけ?あ、そんだけ考えられる脳味噌がシズちゃんには無いんだっけ?」
「臨也、テメェいい度胸してんじゃねぇか。今日は俺に殺される覚悟が出来てるってことでいいんだよなぁ?」
「何言ってんの?俺がシズちゃんを殺すの間違いでしょ?」
「テメェ・・・殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す・・・」
呪いの言葉のように殺すを連呼しながら静雄はゆっくりとかけていたサングラスを外し、臨也達の方へと近づいてくる。
「あ、あの、いい加減離してくれませんか?」
巻き込まれるのは御免だと帝人が臨也を見ると、臨也はえ〜、と不満げな声を出して帝人にぎゅうと抱きついた。
「嫌だよ。今日は帝人くんに愛の告白しにきたんだよ?この後帝人くんも俺のことが好きだって言って二人でデートする予定なのに。」
いつ、誰が好きだと言うって?と反論する前に、臨也の告白という言葉に静雄はピク、と反応して立ち止まる。
「何の話だ?」
「別にシズちゃんに言う必要ないでしょ。俺と帝人くんが恋人になったってシズちゃんには関係無いことだし?」
静雄はギッと臨也を睨みつける。
「関係有りまくりなんだよ。」
「え〜何が?」
「俺は、俺は・・・竜ヶ峰のことが好きだからだっ!!」
顔を真っ赤にしながら叫ぶ静雄をこっちもか、と帝人はうんざりした面持ちで見る。
「マジ?本当、シズちゃんって空気読めないっていうか、邪魔だよね。」
臨也も帝人に負けないくらいのうんざりとした表情で静雄を睨む。しばらく睨み合うと、二人はいつものように、いやいつも以上の力で喧嘩をし、今までにないくらいに街を破壊しまくった。



という出来事があって以来、帝人目当てに池袋にやってくる臨也を静雄が見かける度に壮絶なバトルを繰り広げるのである。
「よう、相変わらず派手にやってんな。」
ため息をつくばかりの帝人の背中に声がかけられ、振り返ると門田が片手を挙げて応えた。後ろには瞳をキラキラさせた狩沢もいる。
「みかプーったらもうモテモテなんだからぁ!それでそれで?みかプーはシズシズとイザイザのどっち選ぶの?」
帝人はうんざりした様子で何度目か分からないため息をつく。
「どっちを選ぶも何も、二人には友愛以上の感情を持っていませんし、選ぶつもりとかもありません。それに・・・恋人ならもういますし。」
ええ!?と狩沢だけでなく門田まで驚きの声を上げる。
「・・・そんなに僕が誰かと付き合ってるのって意外ですか?」
「意外ってゆーか、興味無さそうに見えるよな。」
門田はそうフォローしたが、そこでより一層瞳を輝かせたのは狩沢だ。
「誰!?あの二人を押しやってみかプーのハートを射止めたのは一体誰なわけ!?」
「俺ッスよ!」
どう答えたものかと考え込む帝人の後ろからドンッとぶつかるようにして抱きついた親友であり、恋人の紀田正臣がそう元気に答えた。
「正臣!今日用事あったんじゃ?」
正臣は帝人にVサインをしてにっこりと笑う。
「いや〜最近用事あるって言ってたのはさぁ、これ買いに行ってたの!!」
そう言って正臣は羽の生えたうさぎのマスコットが付いたストラップを帝人に差し出した。
「・・・へぇ、正臣は恋人なんかよりこのストラップの方がいいってこと。」
「ち、違うって!!」
睨みつける帝人に正臣は慌てて首を横に振る。
「これ最近流行ってるって雑誌に書いてあったストラップでさ、これを恋人同士でお揃いで携帯につけると絶対に別れないって噂されてるんだよ。」
ほら、と正臣は雑誌を帝人に見せると、同じストラップの付いた自分の携帯も見せる。
「ずっと前から好きだった帝人と恋人になれたんだからさ。絶対に別れたくないし、藁にも縋る思いっていうか・・・」
ブツブツと呟く正臣にバカだなぁ、と少し顔を赤くした帝人が抱きついた。
「そんなの無くても、僕は正臣とずっと一緒にいるのに。むしろそんなの探してる時間があったら二人でその、デートとか・・・出来たかもしれないのに。」
あ、しまった!と今更ながら悔しがる正臣に帝人は苦笑する。
「ゴメン!帝人っ!全然気付かなかった!」
「もういいよ。・・・ちゃんと僕のこと好きだって思ってくれてるの分かったし。」
二人でクスクスと笑い合っていると、強い視線を感じ、二人は同時に同じ方向を見ると、冷たい視線を向ける門田、目を輝かせる狩沢、さらに先ほどまでナイフやらガードレールやらを投げ合っていた戦争コンビまでこちらを見ていた。
「お前ら、こういう公衆の面前でイチャつくなよ。」
やれやれといった感じで言ったのは門田。
「正臣くんさぁ、いつの間に俺の帝人くんに手を出しちゃったわけ?」
勝手に帝人を自分のものだと傲慢に言い放ったのは臨也。
「帝人は誰にも渡さねぇ・・・」
といつの間にか呼び捨てになっている静雄。
「きゃあぁぁぁぁぁ!!三つ巴ならぬ四つ巴!?正帝←戦争コンビ!!リアルBL最高!!BLの神様ありがとう!!」
緊張感高まるなか、全く空気が読めていない狩沢。
作品名:逃避行! 作家名:にょにょ