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わからない

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僕にはわからない。


彼は、僕は何もわかっていないと熱く語る。

趣味が悪い。わかっていたがキミは趣味が悪いそしてそれを疑いもしない、わかってない。誰かを盲目的に信じるのは純粋と言えば聞こえはいいかもしれないが、愚かしい。
愚かしさは、時に罪だ。
いや確かに誰しも欠点はある、何故なら完璧な人間など此の世に存在しない、視点によって状況によって長所は短所に短所は長所になる、また誰かにとっての欠点を欠点のままその誰かが許容出来たならばそれもまた素晴らしい。素晴らしいが人は進化する生き物だ、学んで日々変化していく。それを成長と呼び、成長する為には己を知らねばならない、それを教えてくれるのがまた人だ。人は人を知る事で己を知りそうやってお互いに影響し合い成長していくだから予測が出来なくて面白い人間は面白い俺は人間が好きだ愛してる!
人、ラブ!
…えーとそれで何の話だっけ?
少し話が逸れたけどあぁそうだ、だから彼女を肯定するのみでなく否定すべき部分を否定するのもまた愛だって言いたいんだよねわかる?だからつまり俺が言いたいのは何よりまず第一に彼女をよく知るべきだ知ったらあんな女選ばないだろうから。
ん?どうしたのかな頬がひきつってるよ?
大丈夫キミは何も心配しないでいいんだ彼女の情報は全部ここに書いてあるからホラ読んで今読んですぐ読んでそして一刻も早く目を覚ますといい、あぁ安心していいよお金はいらないこれは仕事じゃないからね。
ん?どうしたの顔色が悪いよ?何か不満なの?
そうだよね俺がここまでしてあげてるのに不満なわけが無いよねぇ。
読んだ?これでいい加減キミもわかったと思うけど、一応もう一度言っとくけどね俺にはわかってるキミにはあの女が、キミにはキミが、わかってない。
俺は誰よりキミをわかってる、キミにあんな女は似合わない相応しくないO.K.?




「いやおっけーじゃないよね。」
「…」
「でもなんか怖いし頷くしか出来なかったんだけど、僕はどうすればよかったのかな…正臣?」
「…」

昼食を向かい合わせで食べているというのに、正臣は頑なに僕と目を合わせてくれない。
ミラノ風ドリアと熱く見つめ合っているくせに僕を無視とは、十年来の親友として如何なものだろうか。
ムカついたので僕のカクテルサラダから小エビをポイポイとドリアに放りこんでやる。

「さて、ここで問題です。」
「…おいやめろ、」

それは小エビ爆弾とこの話題とその両方のどれだろうか。どれにしろ無視して続行してやる。

「僕とあの人と彼女の中で、」
「お願いやめて!プリーズ!プリーズヘルプミー!」

助けてほしいのは僕の方だ。それがわかっていて、わかっているから見捨てようとした薄情な正臣が悪い。しかし早々に小エビ爆弾が尽きてしまった。
小エビが無いこのサラダに一体なんの価値があるだろうか、わからない、と言うかどうでもいい。

「一番何もわかってないのって、」
「俺!ハイ俺!俺わかってない!わかりたくない!てか知りたくなかったマジで、えマジで?」
「マジだよ目がマジだったよマジで気づいてないなら僕はどうしたらいいのかマジでわからない。」

うつろな瞳でグサグサと残ったレタスをフォークで刺し続ける僕の様子をみて、正臣はやっとわかってくれたのか、僕の肩に手をポンと置きゆっくりと首を振り、殊更に優しい声音でこう囁いた。

「帝人、あなた疲れてるのよ。」
「…」

わかってくれると思った僕が馬鹿だった。



わからない。確かに僕には何もわからない。
何故彼があんな事を言うのか。何故彼が、僕がほんの少し本当にほんの少し、笑顔が可愛いな髪が綺麗だな程度の些細な好意を持った女性をいつの間にか把握しては貶しまくるのか。

そう尋ねると彼曰く、彼は僕を誰よりよくわかっているから先輩として悪い女に騙されるのを見ていられないらしいのだが、じゃあ何故彼が僕を誰よりわかってくれているらしいのか。
そう尋ねると彼曰く、彼は洞察眼が人並み外れて優れていて頭も良いから自然とわかってしまうらしいのだが、じゃあ僕には一体どんな女性が似合うんだろうか。
そう尋ねると彼曰く、まだ僕の周りに僕に相応しい相手は誰もいないらしいのだが、一体何を根拠にしているのかさっぱりわからない。なのにきっぱり断言した挙げ句キミにはそういうのはまだ早いんじゃないかと言い放った。

目眩がする。僕はもう結構な年齢だし、自分の事は自分で決められるし、好きになった相手を盲目的に信じたりしないし、それ以前に彼女達にそこまで特別な好意も持ってもいなかった。

僕にはわからない。

洞察眼に優れ頭も良いはずの彼が、僕と少し親しくなっただけのお互いそんなつもりも無い女性のプライベートを侵害した上で外見から内面までその情報と独断と偏見のみでけちょんけちょんに貶め、改めて考えると本当に失礼な話でごめんなさい、あれやこれやと理由をつけて僕には恋愛はまだ早いと説きおそらくどんな女性だろうと否定するだろう彼が。
その彼に。

もしかして、もしかしてあなたの思う僕にとって理想の相手とやらはあなたなんじゃないですか、と問うべきだろうか、わからない。

何故彼がわからないのか、わからない。


何故彼にわかって欲しいのかも、わからない。
作品名:わからない 作家名:湯鳥