これ以上を望まない
正臣はいつもの軟派な表情とは違う真剣な顔をして僕を見つめて言う。
「僕も正臣のこと好きだよ。」
僕は目を合わさずに答える。
そんな僕の様子に、正臣は痛そうな顔をした。
「なんで、お前はそうなんだよ・・・俺の言葉の意味、知ってるくせに。」
僕の正臣の言ってる意味を知っている、分かっている、気付いている。
だからこそ、それ以外の答えを言うつもりはなかった。
「帝人・・・」
縋るような、泣き出しそうな顔をして僕の名前を呼ぶ正臣に僕は微笑む。
「僕は正臣が好きだよ。」
好きだから正臣とは友人以上の関係にはなりたくない。
いつか離れる関係よりも少し遠いこの関係のままがいい。
いつまでも傍にいたいから。
いつまでも君といたいから。
(僕はこれ以上を望まない。)