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神初 亜樹
神初 亜樹
novelistID. 35484
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四ノ宮那月 太陽と月と夢

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「四ノ宮さん…翔ちゃんは病気なんだ。」



薫くんにそう言われてから一週間。

そして、翔ちゃんが日本をたつまであと一日。

大好きな翔ちゃん。

その翔ちゃんは大きな病気だった。

そしてそのことを僕は知らなかった。

そう、僕なんか翔ちゃんのこと何も分かってなかったんだ。

勝手に親友だと思って、……勝手に好きになっていた。

最初から知っていたら…翔ちゃんが僕のことを信じて話していてくれたら…。

ずっとずっと、その事ばかり考えていた。

僕は、自分が傷つかないように人を信じることをやめていた。

でも僕自身が他人から信じられなくなったと知った今、改めて人間の弱さを知った。



今の僕は誰も信じられないし信じられもしない。

それがこんなにも悲しいだなんて思いもしなかった……

それが僕の全て――。



「こんな僕が翔ちゃんを好きになっていい資格なんてない…」

気が付いたら声に出ていた。

でもどこから声に出ていたのかも分からない…。

「ふっ……はははは……」

自分でも馬鹿馬鹿しいぐらい弱い笑い方だ。

「僕がもっと強ければ翔ちゃんを守って、ちゃんと好きでいられたのかな……なんてね…今更…。」

いくらこれから僕が強くなったとしても…もしかしたら翔ちゃんは…もう二度と―――

「ほんと…今更だ。」



ガタッ



扉の方から音がした。

そして扉が開いた。

そして、そこには目を見開いた…翔ちゃんがいた。

「翔…ちゃん………いつからそこにいたの?」

「ぇっと…ちょっと前から…わりぃ…」



その沈黙は、聞かれていた。を意味するものだ。

でも今更聞かれたからってマズい内容では無いのだ。

翔ちゃんは僕が今まで通り、可愛い翔ちゃんが好きということ改めて聞いただけなんだ。

それは有り難いようで―もどかしかった。

「その…さ、俺様が居なくなっても寂しくて毎分メールとかやめろよな?」

冗談混じりで翔ちゃんは言った。

「うん。翔ちゃんが帰ってくるの信じてるから。」

「おぅ!それでこそ俺の家来だ!!」

翔ちゃんは笑っていた。

その希望に満ちた声と笑顔は、僕の不安なんか一気に吹き飛ばしてくれた。

こんな翔ちゃんだからこそ僕は翔ちゃんを好きになった。

翔ちゃんは僕の太陽。

僕の不安をその明るい笑顔で吹き飛ばしてくれる。

誰よりも輝いていてまぶしい。

そして、その光という名の笑顔を分けてくれる―。



「愛おしい。この世の何よりも愛おしい。僕は翔ちゃんを愛しています、誰よりも。」

言わずにはいられなかった。

だってこんなに愛おしいのだから。

資格とか、そんなのはどうでも良いと思えるぐらい。



しばらくうつむいていた翔ちゃんが顔をあげた。

頬を真っ赤にして涙をながして――。

そして、いままで聞いたこともないような幸せそうな声で――…

「馬鹿…おせぇよ、那月。これだけ俺様を待たせたんだ、分かってるな?」

「翔ちゃん………大好き!ううん、そんなんじゃ足りないくらい愛しています!!」



翔ちゃんの唇からは、甘い恋の味がしました。





…翔ちゃんみたいに輝けなくても、……太陽の光を分けて貰って輝いている月になる。

それがたった今出来た僕の夢です。