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落葉する季節 - リライト版 ゴーストハント 完結記念小説-

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東京、渋谷、道玄坂。
ここに、あたし、勤労学生・谷山麻衣がバイトしているオフィスがある。
渋谷サイキックリサーチ、日本語で言えば渋谷心霊現象調査事務所。正式名称SPR。
つい二か月前までは、眉目秀麗有智高才(ただし性格に難あり)の所長がいたが、現在彼はイギリスに帰国している。


「あぁ、秋だなぁ」
渋谷駅ハチ公口から出て空を見上げてたあたしは、思わずつぶやく。
緑がない駅前のこの風景も、ビルの間から見上げる空はすっかり高くて、秋の気配が漂っている。

今年の夏。
調査に出かけた先では本当に色んなことがあったし、切ない想いもした。
重大なことを聞いた時の、ジリジリと照りつける夏の空気。
嬉しいのに、寂しい。あの時のあたしの気持ち。
つい昨日のように思い出せるのに。
現実は残暑も通り抜け、所長も寡黙な助手さんもいなくても分室は稼働してて、あたしも毎日過ごしてる。

夢じゃないんだよなぁ。

そんなことを考えながら時計を見る。まだバイトの出勤時間までには余裕がある。ゆっくり歩いても充分に間に合う。
でも、なんだろう。早くオフィスにたどり着きたくなったあたしは、オフィスに向かう緩やかな坂道を進むうち、自然と駆け足になった。



「おはよーございますっ」
カランと音をさせてオフィスの扉を開けると、中から「やっほー」と返事がある。同僚のタカだ。
「早いね。あたしの方が先だと思った」
自分の席に荷物を置きながらタカをみると、腕まくりをして掃除をしている最中だ。壁の予定表を見ると、所長代理は【外出】となっている。
「うちの学校、今週末が文化祭だからさ。短縮授業よ」
「いいなぁ。でも、バイト入れてていいの? 準備は?」
タカに聞きながら、日報を手に取る。一応調査員の肩書をもらっているあたしは、自分がいない間の依頼者や案件を確認するのだ。
「喫茶だからね。私は当日までにお菓子作ればいいから、学校に残らなくていいのさ」
秋はどこの学生にとっても文化祭シーズン真っ盛りだ。
かくいうあたしの学校も、二週間後に控えた文化祭の準備で学校中が浮足立っている。あたしは勤労学生を理由に、文化祭当日の店番を約束して準備免除をもぎ取ったけど。
「タカ、ちゃんと食べられるお菓子作れるの?」
「なにおうっ。クッキーのひとつやふたつ作れるわ!」

そんなやり取りをしながら、特記事項のない日報を読み終える。
所長代理になってからは調査を断ることは少なくなったとはいえ、もともと依頼自体多いわけでもないし、いつものことだ。
「そうだ麻衣。うちの学校女子高だから、一応招待チケットがないと入れないんだけど、いる?」
拭き掃除まで終わらせたタカは、あたしの向かいの自席でバインダー整理をする為に戻ってきながら聞いてくる。
「って、何読んでるの」
と、まさに今から読もうと手にしている手元の手紙を指摘してくる。目聡いな。
「学校出るときに下駄箱に入ってたの。その場で読む訳にもいかないし、持ってきたんだー」
タカの机のペン立てからペーパーナイフを取出して封を破きながら答えると、
「ちょ、あんた何でそんな冷静なの。ラブレターでしょっ、縁のない子でしょっ!」
失礼なことをのたまいながら、あたしの後ろに回ってくる。
「って、なに普通に一緒に読もうとしてんのよ」
そう言いながらも、あたしも隠す必要はないのでそのまま読み始める。
「えぇ、いいの!?」
自分で覗き込んでおきながら、隠す様子のないあたしに驚いてタカは慌てて体を離す。
「たまにあるんだ。こういうバイトしてるでしょ、だから」
「相談? 依頼?」
「うん。元々あたしの学校にナルたちが調査に来てたでしょ。 それで、あたしがSPRでバイトしてるのも結構有名でさ。自分の気のせいかもしれないけど、心配で誰かに聞いて欲しいって子にとっては、あたしに話すだけでもいいみたいで」
「へー。知らないところで調査員の仕事してたんだねぇ」
ほうっと溜息つきながら、いい子いい子とタカがあたしの頭を撫でる。
「この頃は少ないよ、容赦ない所長のおかげで。上に話を通すか、報告書にして記録だけ残しておくかの判断も出来るようになったし」
「そうかー。でもさ、何通もそういうことがあったからだとしても、本物のラブレターがないって分かるのもさみしいのう」
もう一度頭を撫でながら言うタカは、明らかにバカにしてる。
「うっさい、あたしにはちゃんと覚えておきたい人がいるんだから。放っておいて……って……」

話しながらも手紙を読んでいたあたしは、明らかに今までの手紙の内容とは違うことに気付き、顔が赤くなっていることを感じた。
そして極めつけは、手紙の締めに『ぜひ来てください、待ってます。』の文字。併せて今週末にある有名進学男子校の文化祭の招待券が1枚、同封されていた。

「!」

あたしが急に立ち上がったせいで、コロ付きの椅子が勢いよく後ろに滑り思いっきりタカにぶつかったが、タカはキャーキャーと叫んで大興奮のため一向に気にしていない。
見間違いかともう一度手の中の見るが、自分宛で間違っていない。
てことは……てことで。

「え?え?ええええぇぇーっ!」