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落葉する季節 - リライト版 ゴーストハント 完結記念小説-

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3-2



静かに話しが出来るからと、一般客は立ち入り禁止区域になっている特別教室棟に移動したあたしたちは、物置と化した被服室に入る。

椅子を引っ張り出して3人が座るや否や、林先輩は口火を切る。
「今回のこと、あたしが勇輝に話を持ちかけたの」
「ええと、まず確認なんですが、ユウキさんというのは」
あたしの確認に、はい、と勇人さんが手を上げる。
「日曜日会ったのは、勇人に扮した俺」
「弟だって」
「うん、兄貴……勇人と俺は一卵性の双子だから。黙ってたら誰も見分けられなかった」

――無表情にしてれば、誰一人見分けられなかった。双子の兄なんだ。
頭の中で、夏に湖の畔で訊いたナルの声が甦る。

「まあ、最近は俺がサッカー始めてから筋肉がついて体格変わってきてたし、全体のイメージはだいぶ違ったかな。あいつ、病気で線がよけい細くなっちまってたから」
それでか。顔を見るまで勇人さんと体格が違うから別人だと思っているのに、まさか同じ顔があると思わないもんね。

「始めはちょっとした喧嘩だったの。バカバカしいくらいの、ちょっとした言い合い」
林先輩は思い詰めているのか、唐突に話し始める。
「俺のせいなんだ」
林先輩の言葉を継いで、勇輝さんが話す。
「俺と尚子、中学の時から付き合ってんだけど、兄貴も尚子のことが好きなんじゃないかって、俺が勝手に疑いはじめて。兄貴が入院してたとき、よく尚子も見舞いに行ってたし」
「好きな人のお兄さんだもん、大事だから行くでしょ。しかも、勇輝と一緒に見舞ってたのよ」
怒ったように林先輩が勇輝さんに言う。
「私と勇人の間に恋愛感情がないのは明らかで。少なくても私には少しもなかったし、勇人も何度もあり得ないって言ってたんだけど。あの時の勇輝は意固地なくらい聞く耳持たなかった」
「うん。それで、兄貴が退院してしばらくたって、喧嘩になった。俺あの日もいつもと同じように三人でゲームしたりのんびりしてた。それで、写真が出てきた」
「写真?」
それまで黙っていたあたしも、気になる単語につい反応をしてしまう。
「私が写った学校行事の写真。勇輝も勇人も私も、全員高校がバラバラになっちゃったから、何度か近況報告のつもりで私が写真を持って行ってたの」
「そこまではいつもの通りだったんだけど、その日に限って、兄貴がその写真を何枚か欲しいと言ってきて、尚子も応じた」
「勇人、ちょうど入院が続いて、学校行事に何も参加できていなかったからね」
勇輝さんと林先輩はお互いに話を補足しながら続ける。

「それで、俺がキレて外出して」
そこまで言って、勇輝さんの口が止まる。思い出しているのか、苦い顔だ。
「それで、ムカついて駅前のコンビニで時間を潰してるうちに雨が降ってきて。濡れて帰ろうかと思ったら、兄貴と尚子が来た」
「正確には、傘を持ってない拗ねて飛び出した弟を迎えに、勇人が行ったのよ。私は付き添い」
「俺、素直になれなかったけど、外だったし、尚子も帰る時間だったからちゃんと送りたかったから兄貴と一緒に駅で見送って。でも、その帰り道、俺は兄貴にしてはいけないことをした」
そこで勇輝さんはまたしばらく黙り、ふーっと息を吐く。
「俺、やっぱりムカついて、嫉妬して。自分の傘と兄貴の傘を力任せに折って、雨の中兄貴を放って先に家に帰ったんだ。少ししてから兄貴も戻ってきたけど、体冷やしてて。病気のこと考えたら、体を冷やしたり風邪をひかすなんて、絶対させちゃいけなかったんだ」
そこまで聞いて、あたしは、お兄さん――勇人さんのことを話す二人の口調が、過去形になっていることに気付いた。

「兄貴はまたすぐに病院に逆戻り。結局、夏休みの間に灰になった。俺、幽霊でもなんでも兄貴にちゃんと謝って、本当はどうだったのか聞きたかったんだ。…だけど、姿はもちろんないし、夢枕にも立ちやしない。だから俺、ずっと謝れなくて」
林先輩はすでに言葉はなく、目に涙を浮かべている。
「それでも毎日腹は空くし、学校もあるし、信じられないくらい普通に生活できるんだよな。そしたら、なんとなく兄貴の気配を感じる日があって、兄貴の部屋に入ったらあの写真が置いてあった。実際は親が見つけたのかもしれないけど、写真を見てくれって兄貴に言われてるような気がしたから、ちゃんと見てみたんだ」
「それで、あたしに幽霊を信じるかって聞いたんですね」
うん、と勇輝さんは頷く。
「ちゃんと見たら、写真には尚子以外にも写ってる子がいた」

「谷山さん、私と何回か一緒に写ってるのよ」
林先輩の涙声に、エッとなって思わずまじまじと先輩の顔を見る。
「一年生学校案内と、体育祭」
確かに、四月すぐのオリエンテーリングは一年生への学校案内と銘打ちながら、実態は学校の隅々まで清掃する日で、先輩後輩混ぜたチーム合同で行う。体育祭も縦割りチーム制で、クラス番号が同じであれば一緒のチームになる。写真も撮ったりする。

「私も、勇輝にもう一度全部の写真を見せてくれって言われるまで気付かなかったの」
「兄貴が持ってた以外にも、谷山さんが写っている写真が何枚かあったけど、全部横向きとか見切れててさ、ちゃんと顔が写ってるのは兄貴が持っていた分だけだった」

――言っておきたいことがあったんだけど。やっぱり、やめておく……
ああ、緑陰の中で言われた彼の言葉が聞こえる。

「だから私、谷山さんに手紙を出したの。勇人がほとんど学校行事も出来ずに最後の高校生活を過ごしていたから、せめて文化祭くらいは、て思って」
林先輩はハンカチを握りしめながら俯く。
「俺がサッカー部つながりの友達を頼って、兄貴の学校の先生に頼み込んで、兄貴のクラスの人に手伝ってもらって。当日に兄貴の振りして、谷山さんに会った」
だから、事情を知らない勇人さんの顔を知る人が、体を竦ませるように固まっていたのか。勇人さんはもう、戻ることはないのに……。
「でもさ、あんなことやっても結局、兄貴の言いたいことは分かんなかった。谷山さんのことが好きだったのか、付き合いたいって思ってたのか、何にも分からない。」
林先輩は、涙をこらえきれずに静かに泣いている。

「あたしも、分かりません。でも、ちゃんと教えて下さってありがとうございます。勇人さんの気持ちは今はもう分からないけれど、何も言わないでいたのなら、言わないでおこうと思ってらしたんだと思います。だから、あたしもこれ以上知りたくないです」
丁寧に預かった気持ちは、ちゃんとお返しする。今年の夏あたしが学んだ事。

「うん、それは今ではよく分かる。谷山さんにはつらい思いをさせてごめん。でも、あなたから貴重な話が聞けたから、俺と尚子は前に進めた。本当にありがとう」
そう言ってお辞儀した後、泣き止まない林先輩の頭をポンポンと叩く勇輝さん。いいな、お互いを思いやってるこういう関係。

「それじゃ、あたし、そろそろ行きます。勇輝さんは、最後まで文化祭楽しんでいって下さいね」
あたしは穏やかな気持ちを素直に言葉にして、被服室を後にした。




夏の終わりに確信した気持ち。大切に大切にしてきたからこそ、分かる。あの日の思いは今も何も変わっていない。

―― 一人でも恋はできるから、もう泣かない。



Fin.