コンタクト
「どうしよっかなぁ・・・」
隣の席に座っていた恋人が、ポツリとつぶやいた。
放課後の教室にいるのは彼と俺だけで、その声は静かな教室にやけに響いた。
俺の恋人、塚原要はメガネを拭きながら、レンズをじっと睨んでいる。
「・・・何が?」
―ペアリングのデザインに迷ってるなら、俺に任せて欲しいのだけど。
きっとそんなことを言ったら、彼は赤面しながら殴ってくるのだろうなぁ思いながら見つめていると 要は、あぁ、と言ってメガネを指差した。
「いや、その。コンタクトにしようかなぁっておもってさ。」
え。何で急に???
俺の表情を読み取ったのか、要はため息を漏らしながら理由を話した。
「なんか俺ってよくメガネとられんだろ?・・・主にお前と子ザルに。」
「えぇ、まぁ、否定はしませんが。」
だろうな、と要は言いながら俺を軽く睨んだ。おぉ恐。
「んで、まぁコンタクトにすりゃそういうこともないし。それに壊れたりしないから便利かなぁって思って。」
レンズを見ながら話をしていた要は、ふいに俺のほうを見て「どう思う、祐希?」と意見を求めてきた。
ふむ・・・。少し考えてみて、要を見て・・・あぁかわいい。
って、そうじゃなくて(危ない危ない)
数秒間考えて、あぁと気がついた。
「えっと、要はね、メガネのほうがいいよ。」
俺が考えていた間ずっと無言だった要は、なんでだよ?と言うように眉根を寄せた。 その表情を見ながら、俺は自信満々に答えた。
「だってさ、よく考えてみなよ要。もし俺らが要の家で2人きりになって、ムラッとした俺が要を押し倒しちゃってオールナイトした場合、コンタクトだと目に負担がかかるんじゃないの??」
この時点で、要の顔が真っ赤に染まった。だが、続ける。
「それにさ、要はメガネ取るとかわいさが倍増しちゃうでしょ?そんなの全校生徒に見られたら・・・俺の要が超人気になっちゃう。」
俺って結構、やきもち焼いちゃうよ?そう言い切ったとたん、トマトのように真っ赤な顔をした要に頭をはたかれた。
痛い・・・。涙目になりながら顔を上げると、やはり赤い顔をした要は「ト、トイレ行って来る///」といって走っていってしまった。
後ろから見てわかるぐらい、耳まで赤かった。
「・・・結構、真面目に答えたんですけどね・・・」
照れ隠しで叩く、彼の力は案外強い。
でもそんなとこまでかわいいと思ってしまうのは、やはり自分が要中毒だからだろうか。
くぁっと伸びをして、窓の外を眺めながら、愛おしい恋人が帰ってくるのを待った。