二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
フレンドボーイ42
フレンドボーイ42
novelistID. 608
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

Seminar X

INDEX|1ページ/1ページ|

 
 心を動かすのに、強い力もてこも何にも必要ない。弱くなり不安定になった心に、ただ、一言救われるような感覚を与えてやるだけでいい。そうして、彼は吸い込まれていった。彼を痛めたものとして、最後まで辛抱して、彼の心を取り戻させる必要がある、と感じた。…煙草や麻薬のように、一度味を知ると抜けだすのが困難であり、そしてなぜか規制法が極端なほどに少ないもの。それは、心の中にある、異常な『信心』である。
 勘違いしないでいただきたいのは、私はまっとうな宗教団体を否定もしないし、批判もしない。それは昔から変わっていないし、そうであるなら、私はお墓参りも、寺社仏閣への参拝もしないであろう。私自身、信仰というものは持っている。であるが、それをもってしても、なお許されぬもの、それがカルト信仰である。彼らの指導者はただ言う。「幸せになるには信仰を持つことです」と。
 それは違うだろう。いくらなんだって神様もそんな、幸せにしてくれ、なんて頼まれても困るだろうに。幸せになりたければ、幸せになれるように、一所懸命に働くことだ。もっとも、働いてみんなが幸せになれるわけではない。だが、あるマンガから名言を一つ。

 努力をしたからといって皆栄光をつかめるとは限らない。…しかし、栄光を掴んでいるものは、みなそれ相応の努力をしておる。

 しかし、弱くなった心は支えてくれる何かを求める。人間には生へとひた走る欲望が存在しており、しかもそれは死へひた走る願望に、厄介なことだが、くっついているのだ。それが、理性をときには強く上回る。そうして、彼もまた、その信仰へ走ったのだ。私があの日、疲れやつれた彼にあんなことを言わなければよかったのだ。

 「あんたなんて地獄に落ちてしまえばいいのに」

 それは、彼も相応のショックを受けるだろう。時に人は、本人も意図しないところで気づつき、悩み、苦しむ。それを抑える情動は、何かを頼る事で消滅しようとさせる事が出来る。勿論、完全に抑える事は無理だ。そういうものだ。何でか?それは、ただの適応規制としてしか働かないからである。つまり、自分を助けているわけでも何でもない。ただ自分の弱さを、モノにすがっているだけなのだから。それが麻薬に傾く人もいれば、それが刃物に向かうモノもいる。酒に向かうモノもいる。暴力や破壊行動に出るモノもいる。辺鄙な政治団体に身を投じてしまうモノもいる。もし、あなたが、自分の親類がそのようなもに頼る事があったら、あったならば、いやこれは万が一の話だが、その時あなたは自己をきっとせめるであろう。そう、自分が悪いのだ、と。そう、あの日、彼がそうなった事を知ったとき、私は自己啓発セミナーが出した本を読んで、つられて入ってしまった。そうして、私は非合法な活動に足を踏み入れるところだった。それを救ってくれたのは、とあるカウンセラーだった。そのカウンセラーに、彼のセラピーを任せている。もっとも、私と違って彼の場合、すごく長引いてしまっている。それだけすごくはまってしまったのだ。ハマりすぎた。それは私がいかに彼に効果的なダメージを与えたか、ということだ。分かりやす過ぎるくらいわかりやすい、単純明快なバロメータ。私、どうかしていたのかしら。私はこのままでは、死ぬに死ねない。せめて彼をふつうの生活に戻してあげないと。…これは別に私が幸せを望んでないわけじゃないけれど。しかし、彼がついにこのままだったらどうしよう。どうしようどうしようどうしよう…つられそうだと思うなんてどうかしてるけれど、…あのとき、感情へと、共感へと訴えて仲間を増やしまくったあの日…どうしたらいいのだろうか。もう逃れられないの?ねぇ、ねえ……。

 #

 数年後、とあるセミナーは連日大盛況だった。そこで、とある男女が語る。
 
 「この先生のおかげで、間違った考えに向かうことなく、人生を送れました」
作品名:Seminar X 作家名:フレンドボーイ42