すいーとすいーとはにぃ。
「・・・無いんだね?」
「はい・・・ありません」
問いかける雲雀を前にして、綱吉は俯いて視線を泳がせていた。
2月14日、バレンタインデー。
チョコをあげるだのあげないだの、貰っただの貰えないだの、そんな感じで人々が浮き足立つ日。
当然、綱吉も雲雀にチョコを渡そうとしていたのだが・・・
「その・・・最初は、手作りにしようかと思ったんですけど、失敗ばっかしちゃって。買おうと思っても、なんかすっごい恥ずかしくって・・・だから・・・えーと・・・」
自分の行動を思い返しながら、必死に言葉を探す。
(バカ、俺のバカ。約束したのに。なんで失敗ばっかするんだ。なんで買わなかったんだ)
ぐるぐると、頭の中を後悔ばかりが渦巻く。
(なんでこんなときまでダメツナなんだよ・・・)
「・・・綱吉」
「はいっ!?」
「僕は別に、君を困らせたいわけじゃないんだけど」
「や、あの、その・・・ご、ごめんなさい」
「謝らなくていい。君が頑張ってくれてたことは十分分かってるよ」
「えっ?」
「君から、チョコレートの匂いがする。甘くていい匂い」
「えぇ!?」
綱吉はびっくりして自分の服の袖を嗅いだ。
(えー全然分かんない・・・雲雀さんってやっぱり獣並み!?)
「ねぇ、綱吉」
「な、なんですか?・・・ふわぁ!?」
あっという間に、綱吉はソファに押し倒された。
その上に雲雀が覆い被さり、逃げられないように手首をがっちりと押さえる。
「チョコレートはいらないから、君をちょうだい?」
「えぇ!?そ、それは・・・」
「いいよね?」
わざとたっぷり色気を含んだ声で囁かれ、綱吉は思わず「はい」と返事した。
(そんな声、ずるい・・・!雲雀さんのすけべ~!)
そんな事を言い出せるはずも無く、しばらく応接室からはどんなチョコレートよりも甘い声が響いた。
作品名:すいーとすいーとはにぃ。 作家名:こっこ