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鳴倉(なりくら)
鳴倉(なりくら)
novelistID. 28173
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マハラガーン

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南の海に巨大な海獣が現れる。
王が召し抱える八人の将がその首を落とせば宴のはじまり。

そしてこの季節は、まとめて海獣が現れるので、謝肉祭・マハラガーンは45日もの間開かれる。
その宴のために国中から、あるいは海の彼方から観光客や商売人が集う。


私もその一人。
薬草売りをしております。

マハラガーンが開かれるシンドリアへ入った時、私は一人の男と出会いました。
長い黒髪を一つに束ね、両の耳朶に金環の耳飾りをした男です。

『パセリ、セージ、ローズマリーにタイム』

商売文句を言うと彼は私に声をかけました。


――マハラガーンへ行くのかい?

それならある人に伝えてほしい。
彼はかつての恋人だから。

エウメラ鯛の鱗で衣を縫えと伝えてくれ。針の跡も糸の縫い目も残さずに。
それができたらお前は俺の恋人だと。

そしてそれをバアルの迷宮が現れた海で洗い、アバレウツボの背で乾かせと伝えてくれ。
それができたらお前は俺の恋人だ。


『パセリ、セージ、ローズマリーにタイム』

私は宴に向かいました。
言われたとおりに一人の男を訪ねました。
銀の髪に白い肌に散るそばかす。深緑の頭巾を被った男を訪ねました。

『パセリ、セージ、ローズマリーにタイム』

すべてを伝えると男はいいました。


――マハラガーンへ行くのですか?

ならばそこに来るはずのその人に伝えて下さい。
彼はかつての恋人だから。

パパゴラスの嘴で畑を耕すよう伝えて下さい。朝と夜の間の時間で果樹園ほどの広さの土地を耕してください。
それができたらあなたは私の恋人だと。

そしてそこに火の中をくぐらせたバラの種を植えて、咲いた花を一本残らずバオバロブの葉で刈るよう伝えて下さい。
それを持ってきたらエウメラ鯛の鱗でできた衣を渡しましょう。


『パセリ、セージ、ローズマリーにタイム』


もしも出来ないと言うのなら……。


『パセリ、セージ、ローズマリーにタイム』


ああ、せめて、
やってみせると仰ってください。

そうしたらあなたは私の恋人。


-END-
作品名:マハラガーン 作家名:鳴倉(なりくら)