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金色の双璧 【連続モノ】

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「・・・・アイオロス。君はどうして・・・いつも、そうなのかね?」
「なーんでだろうな?つい、おまえを見ると背後に回ってギュウしたくなるんだ。なに、細かいことは気にするな」
 シャカの背後を取るなんて恐ろしいことをするのはきっと黄金聖闘士では、アイオロスぐらいじゃないだろうか・・・と引き攣った顔で『心は少年、身体は大人、聖域の英雄アイオロス』を年中組は眺め見た。シャカに懐いているアイオロスの図というかなり不気味な光景を直視できず、さっと目をそむけた年中組はシャカを見捨てて、そそくさと作戦会議を再開する。
「いつまで君は私にへばりついているつもりかね。いい加減、離れたまえ」
「いや〜アイオリアの分もしっかりと抱きついてやらんと悪いだろ」
「どんな理屈かね。まったく兄バカにもほどがある」
 呆れたようにシャカが溜息をつくとアイオロスは愉快そうに笑い、手をすっとシャカの顔の前に出した。
「何だね、それは」
 目の前の手紙らしきものを感じ取ったシャカは眉を顰めた。
「アイオリアからのラブレター。恋文。なぁ〜んて書いてあるのか、お兄ちゃんは興味津々だ」
 シャカが手を伸ばし、それを取ろうとするとアイオロスはすっと隠した。僅かにシャカの周囲の空気が低下し、不穏な気配にびくりと年中組が振り返る。

(何してんだ、兄貴はよぉ?)
(かかわらないほうがいい。絶対いい。)
(ていうか、この場から逃げたほうがいいかもよ・・・。シャカの背後に曼荼羅が見える。)

 ひそひそと小宇宙通信を交わしながら三人は楽しそうに未だシャカにへばりついたままのアイオロスと、かたや妖気を放出しまくっているシャカを遠目で眺め見ていた。
「・・・君は一体ここに何をしに来たのかね?遊びに来たのならとっとと消えたまえ。今はそれどころではなかろう」
「俺は愛の伝書鳩さ、シャカ。これが欲しい?欲しかったら“お兄ちゃん大好き”って言ってみな」
「・・・・・・・・・・ほ〜ぅ。面白い冗談だ」
 ヤバイ雰囲気にサァーッと顔を青褪めた年中組はアイオロスとは心中するつもりはさらさらないとばかりに慌ててシャカからアイオロスを引き剥がした。
「落ち着け、シャカ。今は少しでも小宇宙を貯めておかなければならんだろう?な、無駄遣いするな」
「そうそう、デスマスクの言うとおりだよ。なんならもう一度シュラのエクスカリバーでぶった切って貰えばいいって」
「え!?俺がロスを・・・?」
「シュラ、そこはおまえ、この場の雰囲気を読めって!」
 ぎゃあぎゃあと言い合う年中組にしらっと閉じた瞳を向けたシャカは揉みくちゃにされているアイオロスの手から手紙を奪うとすっと姿を消した。
「・・・おーい、おまえたち、いい加減手を離せって。シャカはとっくの昔にどっか行ったぞ?」
 揉みくちゃにされながらも、のほほんと暢気にアイオロスは告げた。
「え?あー、ほんとだ」
 ぽかんと周囲に目を向けるとシャカの姿が見当たらず、一気に脱力する三人組にアイオロスは笑った。
「なーんでおまえたち、そんなにビクついてるんだ?シャカはあーんなに可愛いのに」
「シャカを可愛いなんて言えるのはたぶん、サガと貴方くらいだと思います・・・触らぬ仏にタタリなし。お願いですからあんまりシャカに構わないでくださいよ・・・」
 至極真面目にシュラに言われて「仕方ないなぁ・・」とアイオロスはにんまりと人の悪い笑みを浮かべた。
 一方のシャカはといえば、私室にて少々くたびれている手紙の封を開けていた。
 折り畳まれた手紙をかさりと開くと、シャカは口角をゆるりとあげる。

 ―――アイオリアらしい。

 心の中でそう呟きながら、シャカは再び丁寧に手紙を小さく折り畳み、封筒には戻さずにそれを聖衣の隙間へと入れ込んだ。
 シャカはじんわりとそこから広がる熱が全身を包みこんでいくような心地よい感覚にしばし意識を委ねたのち、シャカはすっと表情を引き締めると皆のいる場所へと戻った。

「なんて書いてあった?」
 すかさずアイオロスが質問をぶつけてくるがシャカは飄々とした表情のまま、「さて」と受け流す。
「言伝とか手紙とかあれば預かるぞ?」
 自称『伝書鳩』アイオロスをまるで追い払うようにシャカは手のひらをヒラヒラさせて「そのようなものはない」と伝えると、年中組の輪の中へと入っていった。
「ふ〜ん・・なるほどねぇ・・・」
 アイオロスはそんなシャカの後姿をじっと観察したのち、目元を細めた。
 アイオリアがシャカに手紙で何を伝えたのかはわからないけれども、アイオロスが見る限り、シャカは喜んでいるように見えたのだ。
 用向きを既に年中組に伝え終えたアイオロスは「ま、とりあえず、おまえたち、しっかり頼んだぞ」と檄を飛ばすと早々に退散することにした。

 きっと今頃、知恵熱でも出しているだろう弟。
 少しでも早く、シャカが喜んでいたことを伝えたいと思い、アイオロスは聖域へと飛び立つのだった。

作品名:金色の双璧 【連続モノ】 作家名:千珠