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東方~宝涙仙~ 其の壱(1)

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東方〜宝涙仙〜

「変わったわね、紅魔館・・・。」


 


紅魔異変が解決し随分と長い時が経った。紅魔館の主レミリア・スカーレットも568歳ほどを向かえようとしてた。
 メイド長も変わっていた。レミリアはあの日悲しんだのだろう。心から愛していたメイド長十六夜咲夜との死という別れ。
 その死も、寿命での死ではなかった。



ー紅魔館ー
「風香ー。紅茶ー。」
 主の声が今日も館で聞える。少し声が低くなったかもしれないが相変わらず少し幼女風の声だった。
「かしこまりやしたー。」
 ※雨霧風香(あまぎり ふうか)
  二つ名:幻想郷の空気嫁
  能力:空気の状態を操る程度の能力

「いい加減そのだらしない口調を直しなさい。」
「直したいんですけどねー。もう癖なので。」
「いかに咲夜が優れてたかがわかるわ・・・。」
「ふへへー。咲夜さんにはかないませんよぉ。」
 生意気な感じの新メイド長雨霧風香がヘラヘラと笑う。レミリアもなんだかんだで風香を気に入っているのであまり怒ったりはしない。
 咲夜も風香を気に入っていた。もしかしたら咲夜が気に入ってたからレミリアも風香を気に入っているのかもしれない。

「なんで私がメイド長に指名されたんでしょうか。」
 能天気な風香がレミリアに問う。
「もしも事件が起きたときアナタなら裏切らず主を守りぬけるだろう、と思ったから。」
「おー。すなわち私はお嬢様に信頼されてるわけですな。」
「まぁそういうことね・・・。てか紅茶。」
「あ、今すぐ用意します!」
 新メイド長は紅茶を注ぎにキッチンへ走り去った。

「咲夜・・・。アナタがいなくなっても、こうして紅魔館は平和を保ててるわ。それはアナタが部下のメイドをしっかりとしつけてくれたおかげね・・・。」
 レミリアの独り言は部屋に響くことなく空気に消える。
咲夜がいなくなってからレミリアの独り言は多くなった。散歩も傘を差してくれる咲夜がいなくなってからはしなくなった。

「お待たせましたー。」
「"お待たせしました"。やり直し。」
「お待たせしやしたー。」
「はぁ・・・。まぁいいわ。紅茶をちょうだい。」
「今日の紅茶はチェリーのフレーバードティーに動物の血液を混ぜた紅茶です。」
 説明には反応しないのがレミリアのこだわり、多分。ティーカップに口をつけ紅茶をそっとそそる。
「紅茶作るのうまくなったわね。いや、本当に。」
「ありがとうございます。」
「咲夜の紅茶を思い出すわ。彼女も最初はひどかったのよ。」
「そういや私咲夜さんの注いだ紅茶飲んだことないです・・・。」
 レミリアは何も言えなかった。紅茶を飲みながら呆れ笑みに近い笑みを浮かべていた。
会話が途切れると静寂になって音が消える。風香は静かなとこが好きだがレミリアを前に沈黙が続くのは嫌いだった。
「平和ですねぇ。」
 無理矢理話題を作った。
「そういうのを別世界では"フラグ"っていうらしいわよ。」
「なんですか、それ。」
「クラゲみたいなもんよ。」
「平和=クラゲ ってことですか?」
「・・・うるさい。」
「カリスマブレイクですかー。」
「うるさい!!」
「アッハッハッハッ。失礼しまーす。」
 風香は嬉しそうに、かつ逃げるように部屋を出て行った。

そして部屋でまた声がする。
「・・・テキトーな事言い過ぎたわね・・・。」

   ▼其の弐(2)に続く