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東方~宝涙仙~ 其の弐(2)

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東方〜宝涙仙〜

「お嬢様、今日もいいお天気ですよ。」




 昔レミリアは何か不吉を感じていた。なんかこう、悪夢に追われるような感覚に陥る。
これも運命が読める者の宿命か と思っていた。しかし、紅魔館での生活が始まり、仲間ができてからはあまり不吉を感じなくなっていた。
というよりも不吉を感じることを忘れていた。
 紅魔異変の時もさほど不吉を感じなかった。

そして、今回も・・・



レミリアは窓の外を眺めていた。随分と外に出ていない。
「少し外を歩くべきかしら。」
 散歩を懐かしんだ。昔の紅魔館を思い出す。咲夜よりも前の初代メイド長の時代から記憶が蘇る。
どのメイド長の時も散歩はしていた。なぜ今回は散歩をしないのだろうか。やはり咲夜がいないからだろうか。
 そんな考えがレミリアの頭を駆け巡る。
「んー。そうねぇ・・・。散歩行こうかしら。風香ー。」
 返事がない、ただの空気嫁のようだ。
「風香ぁぁぁぁぁ!!」

「んぁぁぁぁぁぁぁぁい。」
 返事がきた、やはり空気嫁のようだ。

レミリアの耳に階段をタッタカ登ってくる音が聞えてくる。

「うぃすっすー、お待たせましたー。」
「アンタいつになったら"お待たせしました"って言えるようになるの?」
 ハッハッハッと風香が笑ってごまかす。

「用件はなんでしょう。」
「散歩に行くわ。」
「どうぞいってらっしゃいませ。」
「傘持ち役としてアンタも・・・やっぱいいわ。」
「へ?」
「今日は久々に一人で歩いてみたい気分だわ。」
「じゃぁ私はご飯の支度と掃除しておきます。」
「頼んだわ。」
「それじゃ、気をつけてください。」
 風香はそう言って部屋を後にした。服従感が足りない。
メイドならお嬢様を見送るのが当たり前なんじゃないのか。
レミリアはそう思ったが口にはしなかった。別にそこまでして欲しいとも思っていない。むしろ無駄に気を使われたくないのだろう。
レミリアだって一人で出かけることくらいできる。というか500歳超えても見送り無しで出かけれないならば異常だ。人間からしたら500歳生きるのも異常なんだけど。

「着替えるのってめんどくさいのよね・・・。」
 クローゼットに手を伸ばしながら気だるそうにするお嬢。クローゼットの中にはピンク色のフリル満載のお嬢様服しかないのは秘密だ。
どの服にしようかしら、私オシャレさんだから困っちゃう、という表情を何気なく浮かべるレミリア。
今日はこの服にしましょう、私ったらオシャレさんね、という表情を浮かべれないが為にため息をつく。

「うー。」
 人間も妖怪もやはり"着替える"という行為はやはりめんどくさいらしい。うーうー言いながらゆっくりと着替える。お嬢様服の袖からニュッととがった爪のついた腕が生えてくる。
武威破壊をすると"鋭利な爪"とかが報酬でもらえそうだ。とある珍獣狩りの桃毛獣のように服もピンクだし。どーでもいいけど。
パンチラ防止の為なのか、そういう着こなしなのか、スカートの下には短パンのようなものを履いている。

「準備完了ー。さぁ行こうかしら。」
 しかしやはり紅魔館。めんどくさいのはここから。部屋から玄関に向かうまでに軽く15分はかかるだろう。紅魔館を歩き回れば十分散歩になりそうだ。
この館の主(レミリア)も、階段を作りすぎたのは失敗だ、とか思ってるらしい。
この館のお嬢様(レミリア)は昔階段の多い家がカッコイイと思ってたらしく、いまさらになってこの館の持ち主(レミリア)は昔の自分を馬鹿に思っている。

「飛べばいいのよ。」
 飛べばいいのですよ。そうですよおぜうさま。頭使ってください。
それにしても自分の家を飛行で移動するお嬢様はどこかアホっぽい。


「お嬢様どこかへ行かれるんですか?」
 飛んでいるレミリアに一人のメイドが話しかけた。
 ※夢子(ゆめこ)
 二つ名:魔界メイド/Maid
 能力:不明


「あぁ夢子、ちょうどよかった。傘持ってきてくれないかしら?」
「日傘ですか?・・・とういうか日傘しかないですね。かしこまりました。」
「アンタはあの脳天気長と違って瀟洒ね。」
「ありがとうございます。」
 そう言い夢子は傘を取りに行った。
夢子はレミリアに服従している。もともと魔界のメイドとして働いていた彼女は始めは紅魔館のメンバーに抵抗があったが、レミリアを始めとするその他のメンバーの穏やかさに心を開いてくれた。
だが、彼女はそんな紅魔館のメンバーであった咲夜を知らない。彼女が配属されたころにはメイド長は十六夜咲夜でなく雨霧風香となっていた。
ときどきレミリアが「咲夜」と口にした時はよく質問しているからある程度のことは知っているだろうけど、顔や姿は知らない。

「あの、お一人ですか?」
 傘を持って戻ってきた夢子がレミリアに語る。
「ん?ええ。ちょっと散歩に。」
「傘持ちましょうか?」
「大丈夫よ。今日は一人で歩きたい気分なの。」
「そういや私が配属されてからまだ一度も散歩したことありませんよね?」
「咲夜がいなくなってからしてないわ。」
「そうですか・・・。そんなにも元メイド長の事が・・・。」
「気にしなくて大丈夫よ。じゃぁ行ってくるわ。」
「いってらっしゃいませお嬢様。」
 レミリアに傘をわたし、夢子は頭を下げて主を見送った。


「久々の外ねぇ。体が日光にますます弱くなってなけりゃいいけど。」
 そして永遠に黒い夜を仰いでいた紅き幼き月は玄関の扉を力強く開け放ち、外にでた。

  
              ▼其の参(3)に続く